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 主にデータ・センターをはじめとする大規模なサーバー・システム向けとして次世代ネットワーク技術の開発が進んでいる。10Gビット・イーサネットをベースに,レイヤー2でのフロー制御など信頼性を高めるための技術を盛り込んだ,「CEE」(converged enhanced Ethernet)である。これにより,従来は別々だったストレージI/O用のネットワークとLANを統合(converge)できるようになる。

 CEEが登場した背景には,ユーザーのサーバー・システムが大規模化し,運用コスト抑制のニーズが高まってきたことがある。特に最近需要が急速に膨らんでいるデータ・センターでは,いかにコストを抑え,高品質なサービスを提供するかが生き残りのカギになっている。

 CEEの標準仕様は2009年末から2010年にかけて完成する見込みだが,標準化作業に参加しているベンダーの間では基本仕様についての合意が取れていて,一部のベンダーは既に製品を提供している。次世代データセンターを支えるCEEの仕組みを紹介しよう。

 一口にサーバー運用のコスト削減と言っても,安価なサーバー・マシンを使ったスケールアウト,サーバーのハードウエア統合,ライセンスの抑制など,方法はいろいろある。その中で,サーバー・エリアのネットワーク運用にかかるコストは,今まであまり目を向けられずに来た。ただ,サーバー数の増加やストレージの大規模化が進むにつれ,それをつなぐネットワークのコストが無視できなくなってきた。

 サーバー仮想化技術の導入が進んできていることも,インタフェース統合への期待を加速させている。特に,Webサーバーなどフロントエンドのサーバーだ。

 一般的にフロントエンドのサーバーは重要なデータや大容量データ,高いI/O性能を求めるデータを保持しない。これらはバックエンドのデータベース・サーバーに接続された外部ストレージに保存される。ただ仮想化技術を使う場合,サーバー・マシン上で稼働するOS(ゲストOS)やアプリケーションを動的に切り替えられる仕組みにしなければならない。物理サーバー間での仮想サーバー移動(ライブ・マイグレーション)など仮想化技術を導入したメリットを最大限活用するためだ。そこで,仮想サーバーのイメージ・ファイルを外部ストレージから取り込めるよう,フロントエンド・サーバーからも外部ストレージに接続できるようにする必要がある(図1)。

図1●サーバー仮想化技術のフロント・サーバー適応とSAN接続
図1●サーバー仮想化技術のフロント・サーバー適応とSAN接続
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 問題は,個々のフロントエンド・サーバーには,安価で多くのインタフェースを搭載できないマシンを使うケースが多いことである。仮想化技術を使ってサーバーを集約しても,個々のマシンがいくつもの高価なインタフェースを搭載できるクラスのマシンになってしまうと,コスト削減効果が薄れてしまう。

 しかもサーバー仮想化環境が大規模化した場合,ストレージ接続にはファイバ・チャネルを使うことが多い。大規模な環境では,75%のユーザーがファイバ・チャネルによるSAN(storage area network)を利用しているというデータもある。そこでLAN(イーサネット)とSAN(ファイバ・チャネル)のインタフェース統合のニーズが生まれる。LAN接続用とストレージ接続用のインタフェースを統合できれば,小型の比較的安価なサーバーで済む。CEEの登場により,イーサネット通信用インタフェース(NIC)とファイバ・チャネル通信用インタフェース(HBA)を一つのインタフェースに統合できる。

 サーバーに搭載するインタフェースを集約すれば物理構成が単純化され,ケーブリングも容易になる。さらに,従来,LAN,SANのコア・ネットワークに接続するために必要だった各エッジ・スイッチも統合型のスイッチに集約できる。CEE環境ではインタフェース統合により,上記の物理的な効果に加え,ケーブリングの複雑さが招いていた冷却効率の低下を抑制するなど複合的な効果も期待されている(図2)。

図2●インタフェース統合がもたらす具体的な効果
図2●インタフェース統合がもたらす具体的な効果
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 CEEをベースとした統合ネットワークには構成要素として,CEEに対応した下記の二つの機器が必要となる。

-CNA(converged network adapter):サーバーに搭載する統合物理インタフェース
-CEE/FCoE switch:CNAから既存のIP network,FC SANへのアクセスを行うスイッチ

 サーバーには,CNAと呼ばれる統合インタフェースを搭載する。従来のNICとHBAが統合されたインタフェースで,サーバーOSはNICとHBAに分割して認識する。図3はCNAと従来のHBAを搭載したWindowsサーバー上のデバイスマネージャの画面である。サーバーからは統合型スイッチ(CEE/FCoEスイッチ)に接続し,このスイッチを経由して既存のLAN環境,SAN環境に接続する。

図3●CAN(converged network adapter)の構成とOSからの認識
図3●CNA(converged network adapter)の構成とOSからの認識
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 CNAから接続する先には従来のLANとFC SANがあり,CEE/FCoEスイッチがトラフィックを振り分ける。この際,FCプロトコルのデータをイーサネット・フレームにマッピングする。そのための仕様としてCEEと並行してT11 ANSIで開発されているのがFCoE(fibre channel over Ethernet)である。本連載ではFCoEについての詳細な解説は割愛するが,CEE上を流れるプロトコルの一つであり,FCプロトコルはイーサネット・フレームにカプセリングされ,FCoEフレームとしてCEE上を流れると理解しておけば良い(図4)。

図4●FCoEのプロトコル概要
図4●FCoEのプロトコル概要
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望月 一平
ブロケード コミュニケーションズ システムズ
システムエンジニアリング本部システムエンジニア
日本ヒューレット・パッカードのプリセールスSE部門でストレージ技術者として各業界の大規模案件を経験。さらに災害対策やサーバー・コンソリデーション,ITインフラの全体最適化などのソリューションを提案する活動に従事。その後ブロケード コミュニケーションズ システムズに入社。現在は,パートナ担当エンジニアとしてデータ・センター・ネットワークの設計・導入に関する提案を支援している。