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 イーサネットとファイバ・チャネルを新しい物理層に統合するためには,当然,両方の特性に対応している必要がある。CEEは既存の10Gイーサネットをベースにしていることから,LANとして使う分には問題はない。重要なのは同時にファイバ・チャネルのプロトコル(FCプロトコル)を通せるようにすることだ。

 既存のイーサネットとファイバ・チャネルはどのような違いがあるのだろうか。その背景には各ネットワークが開発された背景の違いがあると言えるだろう。イーサネットは回線品質よりもアクセス性を重視して開発されたネットワーク技術である。これに対してファイバ・チャネルは高信頼性,低遅延のチャネル技術がベース。接続距離や接続デバイス数といったチャネルの課題を克服したネットワーク技術として開発された(図1)。

図1●イーサネットとファイバ・チャネルの違い
図1●イーサネットとファイバ・チャネルの違い
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 イーサネットがフレーム損失に寛大な技術であるのに対して,ファイバ・チャネルではフレーム損失が発生しないことをプロトコル上の前提としている。ファイバ・チャネルではクレジットという方式を採用し,送信側が受信側のバッファ量をあらかじめ把握できるようになっている。バッファに空きがない状態ではデータを送信しない。このフロー制御の仕組みから,受信側がデータを受けきれずにフレームを失うことはない(図2)。

図2●ファイバ・チャネルの「クレジット」方式の制御
図2●ファイバ・チャネルの「クレジット」方式の制御
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 これに対してイーサネットでは,送信側は受信側の状況を考慮することなくデータを送信し続ける。受信側でバッファの枯渇を判断した場合には,送信側にPAUSEフレーム(IEEE 802.3X)を送信し,送信を一時停止させる。受信側で受けきれなかったフレームは破棄され,受信側のバッファが回復するのを待って再送される。この仕組みのままでは,ファイバ・チャネルに要求される高信頼性,高性能を実現できない。そこでCEEでは,既存の10Gイーサネットに,FCデータのI/Oを行うための合格点となるような信頼性を確保するための機能が追加された。合格点という言葉を使ったのは,ファイバ・チャネルのフロー制御がプロトコル・レベルで実装されており,イーサネットをベースとする以上はファイバ・チャネルを超えることはできないためである。あくまでもファイバ・チャネルに近付けるというアプローチだ。

 信頼性を高めるための拡張機能は,現在検討中のものも含め,5種類が挙げられる。(1)PFC(priority flow control),(2)ETS(enhanced transmission selection),(3)DCBX(data center bridging exchange protocol),(4)CN(congestion notification),(5)TRILL(transparent interconnection of lots of links)――である。

 このうち中核となる機能はPFCとETSの二つ。レイヤー2でプロトコルごとにプライオリティを付け,プロトコルごとのフロー制御を実現するための仕組みである。PFCでは,物理的に一つのポートを論理的に分割し,あらかじめ指定したプロトコルの種類ごとに論理ポートを使い分ける。こうすることで,従来は物理ポート単位で処理されていたPAUSEフレームによるフロー制御を,輻輳が発生したトラフィックだけに適用できる。輻輳の影響を別のトラフィックに波及させずに済むわけだ。もう一方のETSは,設定したプライオリティに基づいてデータ・フレームの送出頻度を制御する機能である。この二つの機能を追加することで,従来のイーサネットにはなかった“ロスレス”の仕組みが実現される。

 DCBXは複数のCEEスイッチやCEE対応インタフェース・カードの間で,PFCやETSによるフロー制御のためのパラメータを共有するためのプロトコル。ネットワーク全体としてフロー制御の整合性を保つために,DCBXを使ってパラメータを交換する。

 CN,TRILLの二つは,CEEスイッチが複数ある比較的広域なネットワークを構築・運用する際に重要になる技術である。CNは,CEEネットワーク内でエンド・ツー・エンドで輻輳が発生していないかを監視し,緩和するように制御する。PFCとETSでは,例えばストレージとサーバーの間に複数のCEEスイッチがあると,PAUSEフレームが送信元に届かず,フローを制御できない場面が出てくる。そこで,PAUSEフレームとは別にCNを使って,受信側が輻輳状態にあることを送信元に通知する。CNの標準化活動は現在も続いており,オプションという位置付けの機能になっている。開発当初とは位置付けが異なっているが,今後CEEスイッチの導入が進み,スイッチが多段になったCEEネットワークが実現されるようになると,非常に重要な機能になる。

 TRILLはレイヤー2での最短パス・スイッチング,マルチパス/パス・フェールオーバーを実現するための仕組みである。ファイバ・チャネルをご存知の方であれば当然の機能ではあるが,IPネットワークの技術者の方にとっては画期的な機能であると言えるだろう。

 これら二つの機能は現時点ではまだ開発中ではあるが,今後CEEファブリックの普及,CEEスイッチのカスケード接続によるCEEファブリック拡大に対しては非常に重要な機能であると考えられる。

望月 一平
ブロケード コミュニケーションズ システムズ
システムエンジニアリング本部システムエンジニア
日本ヒューレット・パッカードのプリセールスSE部門でストレージ技術者として各業界の大規模案件を経験。さらに災害対策やサーバー・コンソリデーション,ITインフラの全体最適化などのソリューションを提案する活動に従事。その後ブロケード コミュニケーションズ システムズに入社。現在は,パートナ担当エンジニアとしてデータ・センター・ネットワークの設計・導入に関する提案を支援している。