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事業者が多く複雑な送電網

 米国のおける電力設備の脆弱さの原因は、電力会社とその間を結ぶ送電網が非常に複雑化していることも起因している。日本の25倍以上ある国土の中に、500の電力会社と2700以上の発電所が存在し、30万キロメートルに及ぶ送電線が網の目のように広がっている(図1)。

図1●米国では数多くの事業者が網の目のように送電網を構築している
図1●米国では数多くの事業者が網の目のように送電網を構築している
米連邦緊急事態管理局のデータ。
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 送電線と送電は電力会社だけが管理しているわけではない。州境を越えて電力会社間をまたがる送電線は「地域送電会社(RTO)」、州レベルの送電網を管理するのは「独立システム・オペレーター(ISO)」である。異なる立場にある企業がつながり合って送電網が構成されている。

 電力需要は高まっているにもかかわらず、それを満たせない現状もある。米エネルギー省が公開している情報に、現状がよく表れている。現在米国の送電網を含めた電力システムの信頼性は99.97%であるという。一見すると高い数値に見えるが、それでも停電などが経済に与える影響は年間15兆円にも上る。1ドルを100円で換算した数値である。また米国も他の先進国と同様、1980年以降電力消費のニーズは急速に上昇しているが、その間に新たに設置された送電線は全体の0.2%にも満たない。

 現在米国の電力業界が抱える問題は、主に三つある。(1)プレーヤーが多く地域ごとの電力需要が把握できないため、停電や無駄な発電が多発してしまう。(2)電力需要が高まっているにもかかわらず、送電網の容量が不十分。自然エネルギーによる発電量増加にも対応できない。(3)電気利用者は自分の電気代や電力消費量がわからない。そのため電力を過剰に消費し、送電網を圧迫する。

 スマートグリッドはこれらを一気に解決する施策と期待されている。

岸本 善一(きしもと ぜんいち)
米アイピー・デバイセズ代表
京都大学電気工学科を卒業後、米国でコンピュータ・サイエンスの博士号を取得。GTE研究所、米ヒューレット・パッカード、米NECを経て1998年にアイピー・デバイセズを設立。先端技術をビジネス展開に結びつけるコンサルティング業務を提供する一方で、ベンチャー企業での技術とビジネスの融合にも力を注いでいる。