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小野寺 佐知子 氏
富士通研究所 ソフトウエア&ソリューション研究所
ソリューションテクノロジ研究部
小野寺 佐知子 氏

 研究開発とは,企業の研究所などで新しい技術や製品を開発する仕事である。大学などで積み重ねてきた研究を,会社でもそのまま続けたり,あるいは仕事に生かしたりしたいと考えて,研究開発の仕事を希望している人も多いだろう。

 「企業の研究者の醍醐味は,自分の研究が製品という形になって市場に出ること」。富士通研究所で研究開発の仕事をしている小野寺 佐知子氏はそう話す。大阪大学大学院で情報工学を専攻し,コンピュータと人とのかかわりに興味を持った小野寺氏。理論の研究だけではなく,製品開発に携わりたいと,IT企業の研究職を仕事に選んだ。

 小野寺氏は入社早々,新規事業の開発プロジェクトに配属されることになる。そこで,イルカに似た“人工生物”の世界をパソコン上に実現するソフト「TEO」の開発を手がけた。「富士通研究所が持っていた生物の動きをCG化する技術をベースに,映像プロデューサの手塚 眞氏とのコラボレーションによって,人工生物の世界を作り上げようという試みでした」(小野寺氏)。

 この仕事は,小野寺氏が製品開発を担当し,企画からプロモーションまで一通り関わったもので,「とても貴重な経験でした」。会社が強みを持つ技術をベースに製品を企画し,未知の市場を拓くことが,IT企業の研究者の役割と言えそうだ。

変化に適応できるテーマで第一人者になる

 企業が手がける研究開発は,一般に会社の事業領域と密接にリンクすることが多い。IT企業の場合,90年代以降は実用化が10年以上先になる基礎研究よりも,応用研究が増える傾向にある。小野寺氏が勤務する富士通研究所でも,90年代以降はハードウエアから,ハードとソフトを組み合わせたソリューションへと研究テーマが大きく動いた。

 こうした状況で,IT企業の研究者として成果を上げていくには,まず自分の専門分野と得意な研究領域を確立することが求められる。そして,自分の研究が会社の事業にどのように役立つかを常に意識して取り組むことが重要となる。

 小野寺氏は,富士通研究所において,ほぼ一貫して音声処理分野の研究に携わってきた。音声による自動応答システムの研究や,音声認識を利用してコールセンターの業務プロセスを改善する研究などを次々と手がけた。

 富士通が90年代後半にアウトソーシング事業を拡大するのに伴い,コールセンター業務の効率化とサービス価値の向上が重要なテーマになった。そこで小野寺氏は音声対話処理の技術を生かし,顧客に好感を持たれる応対の手順,話し方の研究開発に取り組んだ。研究成果は情報通信学会などで発表され,同氏の研究者としてのマイルストーンになった。

 「コールセンターの業務改善の研究で成果を上げられたことが,研究者としての自信になっています」と小野寺氏は語る。2度の出産を経て研究職場に復帰し,限られた勤務時間内で成果を出すべく,懸命に努力したという。それだけに,周囲から高い評価を得られたことは,同氏にとって,大きな励みになったに違いない。

お仕事解説:研究開発

会社の利益に貢献する製品や技術を開発する

 企業の研究は,基礎研究と応用研究に大きく分けられる。基礎研究とは,会社の将来の事業基盤となる製品やサービスの芽を探ることを目的にしている。一方の応用研究とは数年以内の事業化・製品化を目的にしている。広く社会に貢献する研究を行っている大学や国の研究所とは,根本的に目的が異なる。不況下にある昨今,企業の研究所は,基礎研究よりも目先の利益に直結する応用研究に注力する傾向がある。

必要なスキル

  • 情熱と知識
    時代が変わっても通用するような基本テーマへの情熱と知識が求められる。
  • 応用力
    会社の事業領域の変化に自分のテーマを適応させる応用力が必要。
  • 自己管理能力
    チームみんなに迷惑をかけないため,自己管理能力は必須。
  • プレゼン能力
    研究成果を学会などで発表することがある。このときに効果的にアピールするプレゼン能力も重視される。