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 地上アナログ放送の終了によって空く帯域を利用して,各種の新たな通信・放送の無線システムの実用化が計画されている。2011年7月24日に空くVHF帯では,携帯端末向けマルチメディア放送や,いわゆる安心・安全に向けた自営通信の実用化が予定されている。1年かけて行うデジタル放送チャンネルのリパックによって空く周波数を含めて,UHF帯ではITS(衝突防止に向けた車車間通信など安全運転支援無線システム)や移動体通信に利用することになっている。

 これらの新しい通信・放送のシステムは,地上アナログ放送が終了した後の,いわゆる「更地」を利用する。しかし,それにも関わらず,実際には先行システムとの干渉問題対策の検討が避けて通れない課題として浮上してきた。

 放送の場合は,たとえ電波の送出を止めても,レガシーの受信機が存在する。テレビ端末は電波は発射しないが,搭載するチューナーは当該周波数を受信し続ける。そして,地上波の放送が終了しても,ケーブルテレビは放送を継続する。一般の無線システムの跡地利用とは事情が全く異なる。

デジ・アナ変換サービスとバッティング

 VHF帯については,携帯向けマルチメディア放送の実用化に向けて総務省が示した「制度整備に関する基本的方針」の案に対して,ケーブルテレビ連盟は「207.5M~222MHzと90M~108MHzのいわゆるVHF帯域の地上アナログ放送跡地であり,その電波のケーブルテレビ施設や共同受信施設への飛込みによる混信障害の恐れがある。特定基地局の置局については十分に考慮されるように」という意見を提出した。これを受けて総務省は,基本的方針の開設計画の認定の審査項目に「有線テレビジョン放送に対する混信等の防止に関する計画」という項目を追加した。

 この問題は,地上アナログ放送の終了に向けた対策として,国から実施要請が予定されているケーブルテレビによるいわゆる「デジ・アナ変換サービス」に大きく関連してくる。ケーブルテレビ事業者にとっては,出来るだけ早くオール・デジタルに移行し,新しい通信サービスなどに帯域を使いたい。このため,「デジ・アナ変換サービスは避けたい」「期間は出来るだけ短くしたい」と考える関係者は多い。こうした中で,浮上してきたのが,携帯端末向けマルチメディア放送からの干渉という問題である。「やりたくもないデジ・アナ変換サービスを要請されて,しかも干渉問題にさらされるなんてとんでもない話だ」というわけである。

 こうした背景から,地上放送の円滑なデジタル化移行に向けた検討を進める情報通信審議会「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」がまとめた「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政が果たすべき役割」(第6次中間答申)に対するパブリック・コメント(9月4日開催の49回会合で公表)では,ケーブルテレビ事業者から携帯端末向けマルチメディア放送からの干渉を懸念する意見が多数提出された。

 例えば「デジ・アナ変換サービスでは,現在地上アナログ放送を再送信しているVHF帯と同一で再送信するのが現実的で最善。一方で自営通信や携帯端末向けマルチメディア放送などの飛び込み混信は現時点では詳細が不明で,デジ・アナ変換実施の可否が判断できない」「混信障害の課題は早急な整理をお願いしたい」「送信場所の迅速な情報提供,当該送出出力の減衰,送信ビームの調整などを携帯端末向けマルチメディア放送事業者に要請できる会議などの仕組みづくりを検討してほしい」「デジ・アナ変換サービスを行う事業者に混信障害の実態把握に向けた調査支援策を検討してほしい」といったものである。

 一方,携帯端末向けマルチメディア放送への参入を考える事業者にとっても,ただでさえインフラ構築コストが重い負担になると想定されており,追加コストを生む可能性のある干渉問題は頭の痛い問題である。「デジ・アナ変換サービスの暫定的導入については,マルチメディア放送が支障なく導入できるように考慮してほしい」(通信事業者)といった意見が出ている。

ITSでも懸念の声,テレビが電波を拾ってしまう

 UHF帯を利用するITSについても同様である。ITSは,いわゆるリパックで空く周波数を利用する。つまり,地上デジタル放送開始からいま現在,そして少なくとも2012年7月まで,出荷される地上デジタル放送対応のテレビは,チューナーとしてその帯域の電波を受信する能力を持つ。膨大な数の受信機が影響を受ける可能性があると不安視する声もある。ただし実際に,どういう影響がでるのか,本当に影響ができるのかを含めて不明という。