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軸となる切り口が必要

 BIツールをうまく活用している企業に、そのポイントをみてみよう。

 BIツールでどのような切り口のデータを提供するかは、ビジネスの道具として使えるかどうかを左右する最も重要な要素だ。切り口が多すぎても少なすぎても、「利用者は欲しい情報がなかなか得られないシステムだと感じてしまう」(東映アニメの吉谷部長)。

 モスバーガーを運営するモスフードサービスの情報システムグループでは、適切な切り口を見つけるために、コンサルタントを交えて検討を行った。その結果、「売り上げと最も相関の高い指標が、店舗の多きさと営業時間であることがわかった」(永井正彦 経営管理部情報システムグループリーダー)。今ではその切り口が全社共通の指標となっている。

 一度決めた切り口が確定的なものでないことも認識しておく必要がある。例えば、営業部門の体制が商品別から顧客別に変わるような場合は、当然提供すべき切り口も変わる。

 システム部門が、自社にとってどのようなデータが必要かを正確につかむために、利用部門の協力をあおぐことは大切だ。だが完全に利用部門主体にしてしまっては、個別最適のBI、切り口が多すぎて使えないBIが出来上がってしまう。

 BI構築に成功した企業は、業務とシステムの両方に精通した社員をシステム部門に異動させ、プロジェクトの中心に据えるなどしてその関門を乗り越えた。例えば、ノエビアの澤口部長は支店長を、モスフードでBI構築の責任者を務めた森秀樹 経営管理部情報システムグループリーダーは店長を経験したのちシステム部門に異動した。

 加藤産業の入江次長はシステム部門に所属した経験はないが、95年に全社でパソコン導入した際に責任者を務めた。日本テラデータのDWHを導入する際にはその経験を買われて指揮を執ることになった。

 H2Oでは全社で一律に提供するデータや、部署ごとに提供するデータなどをシステム部門が管理している。利用部門から要望があれば、提供する切り口は随時変更できる。

 固定した切り口で情報を提供するよりも、利用者自身が自由にデータを参照するほうが向いている業務もわずかながらある。BIを構築した各社も、必要と判断した場合にはBIツールを利用者に提供している。

「見た目」と「早さ」にこだわれ

 「見た目」も非常に重要だ。Excelに慣れた利用者は、BIにもExcelと似た使い心地を求める。

 NTTデータは、BIツールのなかからユーザーに最も適した製品をアドバイスするサービスを提供している。中川慶一郎ビジネスインテリジェンス推進センタ主任研究員は「Excelに似た操作感を持っていることが選択の決め手になるケースがある」と指摘する。

 ただ、この問題は解決に向かっている。ガートナーの堀内秀明リサーチアプリケーションズマネージングバイスプレジデントは「ニーズの高まりを受け、2004年前後からExcelと似た操作性を持つツールが増え始めた」と指摘する。

 とはいえ現状ではBIツールによってExcelとの“互換性”が微妙に異なるので注意が必要だ。例えば、画面をスクロールする際に「売上高」などの項目を表示し続けるようExcelを設定している場合、BIツールを導入する際も同様の機能がある製品を選ばないと、後で問題になりやすい。

 「早さ」も要注意だ。確かにBIでは手作業に比べると圧倒的に早く分析が終わる。だがデータを受け取る側からすれば、データの集計にかかった時間は関係がない。操作に長い時間がかかると、今までよりもかえって不便になったと感じてしまう。導入当初は問題がなくとも、データ量が増えるにつれて処理が遅くなるケースもある。

図4●クラレは利用頻度の高いデータのみオンメモリーのシステムに移行した
図4●クラレは利用頻度の高いデータのみオンメモリーのシステムに移行した
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 クラレは2008年8月、そうした問題を解決するために既存のBIとは別にオンメモリーのBIを構築した(図4)。オンメモリーのBIで扱うのは、社内でも参照の頻度が特に高い一部の販売データ。新システム導入により、「3分以上かかっていたデータの参照が、10秒程度でできるようになった」(谷部長)。モスフードも日本ネティーザのDWHアプライアンスを導入し、処理の遅延を解消した。

 BI構築の際の敷居は低くなっているとはいえ、活用が進めば、こうした追加投資は避けられないとみておくべきだろう。