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米アップルの「App Store」が活発に利用されている背景には,App Storeで提供できるアプリケーションの開発環境を広く公開していることがある。移動通信事業者も,携帯電話網や端末が持つ機能を有効活用する動きを2008年から見せる。その代表的な動きとして「OneAPI」と「BONDI(ボンダイ)」を取り上げる。

(日経コミュニケーション編集部)


岸田 重行/情報通信総合研究所 主任研究員

 欧米の大手通信事業者は2007年から2008年に,サードパーティによるアプリケーション開発を促進する動きを見せていた。英ボーダフォンは2007年1月に「Betavine(ベータバイン)」,独ドイツ・テレコムは2008年3月に「Developer Portal」という開発者向けコミュニティの運営をそれぞれ始めている。仏オレンジ,スペインのテレフォニカO2,米AT&Tなどもアプリ開発のためのAPI(application programming interface)やソフトウエア開発キットを公開している。

共通の開発環境を目指すOneAPI

 こうした動きがある中,通信事業者を横断した動きが2008年中ころから見られている。世界の移動通信事業者の業界団体,GSMアソシエーション(GSMA)は,2008年6月から「GSMA 3rd Party Access Initiative」という活動を開始し,外部の開発者が複数の通信事業者に共通するAPIを使ってアプリを開発できる環境作りを提唱している。そのためのAPIのプロトタイプとして「OneAPI」を2009年2月に公開。合わせて,名称を「OneAPI Initiative」に変更した。この活動は,ボーダフォンが先導的な役割を果たしている。

 OneAPIでは,「モバイル向けアプリの開発環境が通信事業者ごとに異なっている」との現状認識から,開発環境を一本化することで開発者の負担軽減とアプリの利用機会の拡大を目指す。

 特にOneAPIが意識しているのは,通信網で提供する様々な機能や情報への外部アクセスを許すことで,新たな付加価値の高いアプリの開発を促すことだ(図1)。OneAPIではNaaS(network as a service)というコンセプトを提唱中。通信事業者が自前のサービスやアプリ提供のために,これまで外部からアクセスさせてこなかった機能をウィジェットやWebアプリなどを通じて活用できるようにする。このように上位レイヤーに通信事業者が関与することで,通信網が単なる管(ダムパイプ)に陥る状況を回避できるとする。

図1●OneAPIを通じて様々な事業者の機能や情報が外部から利用可能に
図1●OneAPIを通じて様々な事業者の機能や情報が外部から利用可能に
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Linux陣営も支持するBONDI

 OneAPIの始動と同時期の2008年8月,ボーダフォン,オレンジ,AT&Tなど大手移動通信事業者で構成されるOMTP(Open Mobile Terminal Platform)が,事業者共通仕様の構想として「BONDI」を発表した。2009年2月には「同 version1.0」を発表し,開発環境の整備を進めている。BONDI構想にはOMTPに参加する事業者に加え,ノルウェーのオペラ・ソフトウエアが参加している。また,モバイル向けLinuxを推進する業界団体のLiMo Foundationや,日本のACCESS,アプリックスといったLinux陣営各社がBONDI支持を表明している。

 BONDIのコンセプトでは,携帯端末にある機能や情報を外部のウィジェットやWebアプリから利用できるようにする点が特徴である(図2)。同時に,利用者のセキュリティ確保もうたっており,端末内部の情報への外部からのアクセスを通信事業者などが制限する機能も持たせるとしている。

図2●BONDIの概念図
図2●BONDIの概念図
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 BONDIもOneAPIと同様,通信事業者や端末メーカーが自社のサービスやアプリのために提供している機能を,外部から使えるようにするコンセプトだ。既存の携帯端末では,セキュリティ面への配慮などから,端末内部の情報や機能の一部を他のアプリとは連動しない形で提供している。このため,iPhoneやAndroid端末などのアプリでは提供可能な機能の一部が,既存の携帯端末には提供できない状況にある。

 端末をBONDIに対応させることで,こうしたアプリ開発面での不利を克服すると同時に,セキュリティは通信事業者がコントロールしようとしている。