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 ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第17回と第18回は、「ファンクショナリティ・マトリクス」です。上流工程における要求仕様の範囲や優先度における、“あいまいさ”を排除するための強力な実践的ツールです。今回は、ファンクショナリティ・マトリクスの概要を紹介します。

 「情報システムは動いて初めて経営的な効果をもたらす」――。この点については、議論の余地はありません。ここでいう「動く」とは、品質が確保された情報システムがリリースされるだけでなく、利用者が当初の狙いどおりにその情報システムを活用できている状態を指しています。

 逆に言えば、「動く」までの期間、つまり情報システムを構築している間は、人件費や設備費など多大なコストが継続的に発生している状態です。経営者から見れば、ほとんどメリットを感じられない“ガマン”の期間になります。

絶対必要とは言えないような機能もある

図1●80対20の法則のイメージ
「売り上げの80%は、全顧客の20%によるもの」という現象も多くの企業で当てはまる
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 そのため、IT投資ではよく、「小さく生んで大きく育てる」ことが重要だと言われます。ポイントは、大きな効果をもたらす重要なシステム機能をできるだけ短期間で構築し、早期に成果を得るという考え方です。このような考え方は、「80対20の法則」や「パレートの法則」と基本的に同じ考え方です(図1)。成果を早期に実現できれば、それ以降の投資予算が確保しやすくなるという副次的な効果も期待できます。

 「戦略とは、何をやらないかを決めることである」――。これはマイク・タイソンの名言だそうです。この考え方は、経営戦略やIT戦略にも大いに当てはまりあす。システム構築には数カ月から数年の期間が必要です。この間に、一度決まったはずのことが蒸し返され、要件の増加(Scope Creep)が発生しがちです。何を実現するかだけでなく、「何をやらないか」についても、しっかりと合意できていれば、Scope Creepにも対処できるのです。

 例えば、みなさんがお使いの携帯電話。近年、多機能化が進み何十種類もの機能を備えています。ですが、実際に普段、使っている機能は何種類ぐらいでしょうか。おそらくは、通話やメール、ブラウザ、時計といった、ごく一部の機能しか使っていない方がほとんどではないでしょうか。

 情報システムにおいても、すべての機能の重要度が同じということは決してありません。重要な機能もあれば、絶対必要とは言えないような機能も存在します。

 別の例を挙げましょう。テストで100点満点を狙おうとすると、出題範囲を網羅的に学習しなければならず、膨大な学習時間と労力が必要になります。これを、合格点、例えば70~80点ぐらいをターゲットにすれば、出題傾向などを分析し、よく出題される部分にフォーカスして学習することで、短時間で効率的に成果が出せるはずです。