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 「さすがに13連敗もすると、自分たちが食べてうまいとかまずいとか味を評価していたのでは駄目だと分かった。おいしいものを客観的に評価するにはどうしたらいいかを考えていったところ、数値に行き着いた。最初は、とにかくいろんな測定機器にかけてみようというところから始めた」

 暗中模索の末に生まれたこの手法は、現在の商品開発に脈々と受け継がれている。数値という形で基準を明確にしてベンチマークすれば、確率の高い商品開発ができるからだ。

 「それまでは思い込みに縛られてものづくりをしていた。昨年の延長線上で商品を開発してそこそこ売れても、来年、再来年は駄目になる。トップは我々に危機感を植え付けるために、厳しい評価をしてくれたんだと思う」

 井阪は現在、取締役となり、商品本部で食品開発のトップを務める。冷やし中華の開発で味わった苦い経験も、強い商品を作り続けるために通らなければならない試練だったと振り返る。

 鈴木は、ことあるごとにマーチャンダイザーに厳しい言葉を浴びせ、挑戦心を刺激してきた。「これはチャーハンではない!」と指摘すると、堅調に売れているにもかかわらず店頭からチャーハンを撤去し、生産も中止させてしまうこともあった。

 「売れているからいいのではなく、自分たちが納得できていない味の商品が売れていくことにこそ危機感を持たなければならない」。鈴木は社内にこう訴え続けている。

“ミッションインポッシブル”発令

 目標とする品質基準を数値化する――。この手法を確固たるものにしたのが、2001年に取り組んだ「こだわりおむすびプロジェクト」だった。井阪が立ち上げたこのプロジェクトの成功によって、「チームMD(マーチャンダイジング)」と呼ぶメーカーとの共同開発は大きく変わることになった。

 「200円出しても買いたいと思う価値あるおにぎりを開発せよ」。冷やし中華の開発から2年後の2001年初頭、井阪は鈴木からこう言い渡された。おりしも、2000年12月に値下げした100円おにぎりが、前年比2~3割増と好調な売れ行きを示しているときだった。

 「200円のおにぎりなんて半端じゃないぞ。炊飯の仕方から原材料まで全部変えないと作れない」。まさに未知の領域への突入だと感じた井阪は、それまでのチームMDにはなかった手法を取り入れた。

 チームMDでは、「おにぎり」や「弁当」「調理麺」といった商品カテゴリーごとにチームを編成して開発していく。これに対して、こだわりおむすびプロジェクトは、そうした通常のチームとは別の特命部隊として結成した。

 セブン-イレブンでは、従来の商品開発のタイムテーブルでは達成不可能という“ミッションインポッシブル”の場合には別動隊を組んでいる。商品開発が年々進化するにつれて取り組む課題の難易度が上がっている事情もあり、現在は、プロジェクトチームを組むケースが目立つようになった。こだわりおむすびプロジェクトは、その草分けだった。