PR
独自の工夫でおにぎりのふっくら感を検証した大谷正美氏。製造設備の開発に、日帰りで九州の機械メーカーへ通い詰めた (写真:宮崎 昌紀)

 ところが、いざおにぎりを入れてみると、米が水を吸ってしまい正確に測れない。試行錯誤を繰り返し、ようやく解決策を見いだした。水の代わりにゴマを使ったのである。水と違って吸収されることもなくうまくいった。

 10年以上、セブン-イレブンのおにぎりを作り続けてきた大谷もやはり、こだわりおむすびやおにぎり革命の開発を経験して、ものづくりに対する考えを大きく変えさせられた。

 「それまでは大量に作る考えで商品を開発していた。機械で作れないようなものから逃げてきた。それでは駄目だと分かった」

コンビニでこだわりの麺を売る

 おにぎりの開発で編み出した手法を、ほかの商品の開発に素早く水平展開できるのも、情報共有を徹底させているからにほかならない。

 約60人いるマーチャンダイザーは、毎週月曜日に開催する「MD会議」で、どういうプロセスでどんな商品を開発したかをケーススタディーとして学んでいる。さらに、開発で得たノウハウを蓄積したエクセル形式のファイルを閲覧する仕組みもある。どこのどんな米を使っているかといった、ライバル会社に知られたくない機密情報は、井阪と4人のシニアマーチャンダイザーだけしか見られないようにしている。

 こうした仕組みによって先人の苦労を血肉としてきたからこそ、セブン-イレブンの独自商品は長期にわたって競争力を失わずにいられるのだろう。

 井阪は現在、食品部長の地位にあり、セブン-イレブンの食を支えているといっても過言ではない。十数年にわたっておにぎりという看板を背負ってきただけに、これまで相当なプレッシャーを感じていたに違いない。

 「塩辛い!どうなってるんだ!」。鈴木もおにぎりには強いこだわりを持っており、まずいと容赦なく怒りをぶつけてくる。

 「もう慣れてしまいました」と冗談を飛ばす井阪。商品開発への情熱は全く冷めていない。現在も、新たなプロジェクトが水面下で進行中だという。セブン-イレブンとイトーヨーカ堂、デニーズジャパンとグループ横断で、おいしさにこだわった麺を開発中だ。近い将来、コンビニの売り場に驚くような麺が並ぶ日がやってきそうだ。