PR

 2008年6月21日、日本IBMの黒澤由佳氏は1カ月に及んだガーナ滞在を終えて帰国した。同氏にとって、ガーナはもちろん、アフリカに渡ることさえ初めての経験だ。黒澤氏がガーナへ行った目的は、IBM海外支援チームの一員として、現地企業や団体をITの側面から援助すること。ガーナ第3の都市タコラディにある商工会議所で、起業家を支援する組織を作るプロジェクトに奔走した。正味20日で60人もの関係者と名刺を交換し、協力を取り付けることができた。

予算作りのため部族長に面会

 ガーナの空港に降り立ったのは、黒澤氏を含めて10人。米国、イタリア、インド、カナダ、スペイン、ブラジルと、7カ国のIBM社員からなる多国籍チームだ。求められていたのは、起業家支援組織設立の予算獲得のための根回しと、起業家向けのビジネストレーニングである(図 1)。

図1●日本IBMの黒澤由佳次長は2009年5月、ガーナに乗り込み1カ月間現地の商工会議所を支援した
[画像のクリックで拡大表示]

 予算獲得のため、黒澤氏はパーティやイベントに顔を出し、有力企業のトップに提案書を示して直接支援組織の必要性を説いた。なかなか会う機会がない有力者に対してはチームメンバーの人脈を駆使。IBMブラジルから来た役員秘書が、上司のつてをたどってアポイントを入れた。ガーナにおいては、都市部であっても部族の長が大きな影響力を持っている。2008年6月に入ってようやく面会できた。

 心残りなのはITの支援まで至らなかったこと。当初計画では、Webサイト構築や支援組織へのパソコン導入を支援するはずだった。しかし金融不況の影響でWebサイト構築の予算が削られた。パソコンは予定の期日を過ぎても送られてこない。到着したのは、黒澤氏らIBMの支援チームのメンバーが帰国した後だったという。

 ガーナにおける起業家支援組織の設立は、地元の経済力を強化するために不可欠だった。しかし開発途上国の多くはそのノウハウを持っていない。黒澤氏は、「計画書の作成スキルや、提案書の書き方、PDCAの考え方など、基本的なビジネススキルが十分ではない」と分析する。

 パソコンやインターネットについても同様だ。「ウイルス対策さえ、まったく実施していない」(黒澤氏)。

 開発途上国や、難題に取り組むNGO、NPOは、IT企業の社員が持つIT力やビジネススキルを渇望している。国境なき医師団日本支部のエリック・ウアネス事務局長は「私たちにとっても作業の効率化や情報共有の強化は必要。SIやコンサルティングの側面から支援してもらえることは大歓迎だ」と話す。