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 金融機関の経営者や情報システム責任者で、著者を知らない人はいないはずだ。富永氏は日本銀行でほぼ一貫してシステム関連の仕事に就き、ここ10年間は金融機関に立ち入ってシステムの開発運用体制やリスク管理の実態を調べ、指導する立場にあった。日銀を離れるにあたり、卒論として書き下ろしたのが本書である。その強い思いは、やや奇妙な書名に表れている。

 しかし本書の価値は、金融情報システムのプロが金融機関に向けて書いたにもかかわらず、あらゆる人に役立つ内容になっている点にある。実際、開発運用やシステム統合におけるリスク管理、情報セキュリティや事業継続といったテーマについて平易に書かれている。「(金融機関の)経営者が読める」ことを狙った成果だろう。

 しかも硬いテーマを取り上げていながら本書は実に面白い。「リアルな本音を書いた」からである。例えば「議論喚起のための問題意識の提示」と題した第1章で、「IT障害前提社会」を目指せと説き、「障害を悪と見なす議論を続ける限り、建設的な解決を導き出すことは困難」「身の丈に合った分相応なリスク対応で良い」と断言する。情報システム担当者が読めば、「よくぞ言ってくれた」と拍手するに違いない。

わが国金融機関への期待

わが国金融機関への期待
富永 新著
生産性出版発行
2940円(税込)