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 題名にある「マ・カイリー」は、実在の女性電信士のあだ名。20世紀前半の米国における情報通信を担った一人である。彼女は米国全土の鉄道停車場を放浪しながら、40年にわたって電信稼業に身を置いた。本書はそんなマ・カイリーの、山あり谷ありの生涯を描く。

 著者は電信士を「現在のプログラマやSEといったITエンジニアの先駆け」と表現する。モールス電信は情報を「トン」と「ツー」という二値に置き換え、電線を通じてバケツリレー式に目的地へ送る。インターネットを介したデジタル情報通信の原型であり、モールス電文を作る電信士はITエンジニア、というわけだ。

 本書はマ・カイリーの自叙伝を基に記した。生涯を放浪の中に置くという生き方も破天荒なら、自叙伝も型破りだ。文体はスラング混じりの「べらんめぇ調」。自身の給料を男性並みにするため、電信の腕前を披露して上役をあ然とさせるなど、豪傑ぶりを示すエピソードには事欠かない。

 著者は米国の電信・電話業界の専門家。鉄道の広がりや南北戦争といった当時の世情を含め、電信が人々に与えたインパクトを克明に記す。電信や鉄道に関するうんちくも満載。軽妙な筆致と相まって、一気に読める。

ドレスを着た電信士 マ・カイリー

ドレスを着た電信士 マ・カイリー
松田 裕之著
朱鳥社発行
1680円(税込)