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 RFP作成からベンダー選定までのプロジェクトにおけるプロジェクト・マネージャ(PM)の役割は,基本的にはほかの開発プロジェクトなどのPMと同じである。
人や時間といったリソースを使って,決められた期限までに目標を達成することがPMに求められるミッションである(図2)。

図2●プロジェクト・マネージャのミッション
図2●プロジェクト・マネージャのミッション

 従って,RFPプロジェクトにおいてもスケジュール管理やコスト管理,リスク管理などプロジェクト管理の基本となる項目は,すべてPMの管理対象となる。ただし,RFPプロジェクトにおけるPMの最も重要な役割はコミュニケーションのハブとして機能することである(図3)。表現を変えるとPM=ファシリテータと言ってもよいだろう。

図3●プロジェクト・マネージャは動的なハブ(=ファシリテータ)として機能する
図3●プロジェクト・マネージャは動的なハブ(=ファシリテータ)として機能する

 PMがファシリテーション能力を駆使して,相手にすべき対象は以下の三つである(図4)。

図4●プロジェクト・マネージャのファシリテーション
図4●プロジェクト・マネージャのファシリテーション

・プロジェクト・チーム
・社内(コンサルタントなど第3者がPMの場合は「顧客」)
・ベンダー

(1)プロジェクト・チームに対するファシリテーション
 チーム・メンバーに対する業務指示や進ちょく会議,各種検討会議の進行など日常的なコミュニケーションが中心となる。ここで注意したいのは,プロジェクト・メンバーに「何を」「どこまで」やらせるかということである。

 特に「どこまで」には注意を払う必要がある。例えば業務要求の洗い出しと整理をどんどん厳密に深くやっていくと,それは要件定義や基本設計の作業と同じになってくる。しかし,RFPの段階でそこまでの深さが必要かどうかはケースによって異なるし,また当然,時間的制約もある。プログラムの設計ではなく調達を目的としたRFP作成にはどこまでやればよいか,それを見極め,メンバーを適切にコントロールすることがPMに求められる。

(2)社内に対するファシリテーション
 社内のターゲットは大きく分けると二つあり,一つはエンドユーザー,もう一つは社長や役員会など最終決定者(機関)である。エンドユーザーに関してはヒアリングやブレーン・ストーミングなど,本連載でこれまで解説してきた通りのファシリテーションが必要となる(本連載の「業務要求の実践的ヒアリング・テクニック」を参照)。

 意思決定者(機関)に対しては,ベンダー選定のプロセスや評価結果に関して,客観性や透明性を確保し納得してもらうための説明力が求められる。特に随意契約ではなく,RFPによるコンペ形式の調達においては,意思決定者は誰もが納得のいく単純明快でフェアな結果を求めている。そのため,プロセスの可視化や数量化,用語の定義の一義化などに気を配り,納得感を引き出すことが肝要である。

(3)ベンダーに対するファシリテーション
 RFPプロジェクトの目的の一つは,ベンダーから最善の提案を引き出すことである。いかにしてベンダーの持っている提案力,ソリューション力を最大限まで引き出すことができるか。そのためには文書としてのRFPの完成度だけでは不足であり,やはり面談やQ&Aでのやり取り,さらにプレゼンテーションの場でのコミュニケーションによって補完される部分は大きい。

 調達活動である以上,提案内容や見積り金額に関してベンダーとの駆け引きは当然発生する。交渉の過程で厳しいことを言わなければならない場合もある。しかし,ただ強引な押しの一手では,「安い調達」はできるかもしれないが,最善の提案や最良の開発パートナーを得ることはできない。常にベンダーに対しては公平性と客観性の目を持って,プロとして処遇した上でマネジメントするように心掛けたい。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。