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SAPジャパンの桐井健之氏
SAPジャパンの桐井氏
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日本オラクルの桜本利幸氏
日本オラクルの桜本氏
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 「“制度対応”という意味では,数年前のJ-SOXのときと状況が似ている。だが,今回の国際会計基準(IFRS)の場合,単なる制度対応だけで終わらせず,より“本質的な対応”をとる企業が増えている」---。ITpro EXPO 2009展示会で2009年10月30日,「ERPは経営に貢献できるか ---IFRS対応を見据えて」と題するパネル・ディスカッションが開かれ,IFRS対応している大手ERPベンダー2社のパネリストは異口同音にこう述べた。“本質的な対応”とは,IFRSへの対応を契機にグループ経営管理のあり方を見直し,情報システムだけでなく,業務プロセスや経営そのものを革新していくことだ。

 ディスカッションにパネリストとして登壇したのは,SAPジャパン バイスプレジデントビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部副本部長の桐井健之氏と,日本オラクルアプリケーション事業統括本部担当ディレクターの桜本利幸氏だ。モデレータは日経コンピュータの島田優子記者が務めた。

IFRS(国際会計基準)のロードマップ
IFRS(国際会計基準)のロードマップ
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 国際会計基準は,その名の通り国際的な会計基準である。上場企業に適用されるもので,世界で100カ国以上が自国企業へ強制適用しているか,任意適用を認めている。日本では,今年6月に金融庁が国際会計基準のロードマップを公表し,2010年3月期以降から日本の上場企業はIFRSを任意適用できるようになる。2015年か16年には,日本の会計基準にIFRSを適用する「アダプション」が始まる予定だ。

 IFRSには,日本の現在の会計基準といくつか大きく異なる点がある。よく言われるのは「原則主義」「貸借対照表重視」などだが,一番影響が大きいのは「連結決算重視」となること。少なくともIFRSに基づいた連結財務諸表を作成してレポーティングしなければならず,経営・財務会計や情報システムなど多方面で対応を迫られている。

 だが,SAPの桐井氏は,「ややもすると,IFRSの影響範囲はそこだけだと思われがち」と注意を促す。

グループ経営管理全般を見直す機運が盛り上がる

 IFRSへの注目度は高まっているが,日本企業の現状はどうなのだろうか。ここ1年間で,企業の財務担当役員(CFO)と話す機会が多かったという両氏は次のように述べた。

 SAPの桐井氏は,上場企業なら,すでに何らかのIFRS対応を始めていると話す。上場企業の7~8割は,具体的にプロジェクト・チームを立ち上げ,アセスメント・サービスを受けている段階。グローバル企業や各業種のトップ企業は,独自のアカウンティング・マニュアルを作り,情報システムへの影響を調べ始めているという。

 制度対応という意味においては,「似たようなことが数年前,J-SOX対応のときにもあった。当時は,制度への対応さえクリアすればよい,という考えが多かった」と桐井氏は指摘する。J-SOX対応は企業の力を高めるツールにもなるが,そうした“本質的な対応”をとる企業は少なかったのだ。

 「だが今回は,より本質的な対応を考えている企業が多いと思う。特にグローバル展開する企業の経営者は,IFRSへの対応を通して,自社グループの強みはどこで,本業の利益はここから生み出すべき,という世界共通の経営方針やアカウント・マニュアルを各国の現地法人に浸透させる好機と考えている」と桐井氏は語る。ただし,経済環境が厳しいので,いきなり理想的な形で本質的な対応をとれないのが実情。どこをどのような順番で進めたらいいのか,多くの企業が悩んでいるようだ。

 オラクルの桜本氏は,日本CFO協会が2009年8月に調査した「財務マネジメント・サーベイ」の結果を示しながら日本企業の現状を説明した。CFOは,単なる制度対応だけでなく,管理会計を強化するための情報システム,グループ経営管理を実現する情報システムが必要だと回答しているという。

 「やはりIFRSへの対応を第一に考える企業が一番多い。しかし,これを契機にグループ経営管理全般を見直したいと考えているCFOもたくさんいる。とりあえずコンプライアンス対応しようと考えているCFOはおよそ半分。グローバル展開していて規模の大きい企業ほど,本質的な対応を図ろうと考えているところが多い」(同)という。こうした傾向は,業種業態が異なっても同じようにみられる。

どういうタイムラインで進めていくべきか?

 では,2015年か2016年に始まるIFRSのアダプションに向けて,企業はどのようなマスター・スケジュールを引けばいいのだろうか。

 SAPの桐井氏は,「どの範囲までやっていくかによる」と述べ,企業ごとにスケジュール感が異なることを指摘した。IFRS準拠の連結財務諸表だけに対応する場合は,「アダプションが2015年ということなら,情報システムの変更は2012年ごろから始めることになるだろう」(同)。ただ,国際会計基準へのコンバージェンス(国際会計基準との差異をなくすように日本の会計基準を修正すること)はすでに始まっているし,国際会計基準が強制適用になった後も,いろいろな見直しによってコンバージェンスが続く可能性がある。「やるべきこと,変化することは多いので,できるだけ早くから着手して,残作業を少なくしておくほうがいい」と桐井氏は述べた。

 オラクルの桜本氏も,「いつ」というのは企業によって異なると語る。変化に対応するという意味では,「グループ各社でバラバラな状態の業務プロセスや業務システムを,できれば早期に標準化・統合しておくほうがよいのではないか。何か会計基準に変更が発生しても,グループ全社が次の日から対応できる仕組みを作れる」(同)とする。もちろん,関連するすべての業務プロセスでそうするのは大変だろうが,少なくとも会計だけは対応したほうがよいと話す。こうした点を踏まえて,「いつ」から対応すべきかを各社で検討していかなければならない。