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 今週火曜日,内藤総務副大臣が直々に立ち上げる「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」において,ホワイトスペースに関する議論が本格的に始まる。

 ホワイトスペースは,地上デジタル放送で利用するUHF帯の周波数(2011年7月までは470M~770MHzの300MHz幅,その1年をかけて470M~710MHzの240MHz幅にリパック)が対象になる。都道府県別といった単位で周波数の利用状況を見ると,470M~710MHzのすべてが放送に利用されているわけではない。そこで,各地域で利用されていない周波数については,地上デジタル放送に混信などの悪影響を与えない形で別の用途に利用できるのではないか,というのがホワイトスペースを推進する立場の基本的な考え方である。

 ただし放送業界には,本当に放送に影響がないのかという不安や疑問を抱く関係者が多く,慎重な取り組みを要望する意見が大勢を占めている。

 このホワイトスペースには大きく二つの用途がある「無線ブロードバンド」と,「エリア限定ワンセグ」である。無線ブロードバンドにはさらに大きく2種類に分類できる。固定のワイヤレス通信と,移動体でも利用できるモバイル・ブロードバンドである。前者は,光ファイバーの引き回しなどの難しい過疎地域などにとって有力なブロードバンド回線提供の手段になる可能性がある。後者は,米国では米Googleなどが盛んに実用化に向けて動いている用途である。

 ホワイトスペースのこの三つの用途を電波の管理のしやすさから並べると,(1)「基地局のみが電波を発する」という形になるエリア限定ワンセグ,(2)電波を発する地点が固定である,固定のワイヤレス通信,(3)いつどこで誰が電波を発するのか把握できないモバイル・ブロードバンドの順番である。そして,国内における実用化のニーズという面で見ても,エリア限定ワンセグが圧倒的に高い。

放送と同じ周波数を使える意義

 エリア限定ワンセグは,これまでも盛んに実験が行われてきた。CATV事業者や放送事業者,全国の自治体/空港などが様々な形で取り組みを進めている。ただし,現状では実験局免許を取得した上での期間限定のものか,微弱電波という免許は不要だがエリアが極めて狭い範囲に限られるという運用しか手段がない。関係者の願いは,現在のように実験局の免許を取得する形態ではなく,実用化に向けた「制度化」がなされて,本免許を受けて恒久的なサービスとして利用できるようにすることである。

 こうした中で,「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」(2008年夏に報告書)では「新型コミュニティ放送」と銘打ち,VHF帯ローバンド(Vロー)について,ブロック向け放送に影響を与えない形で実用化を図る方針を打ち出していた。ただし,Vローだと,携帯電話やワンセグから周波数が離れており,端末側でアンテナの工夫が必要となる。さらに,内藤副大臣は,Vローの枠組みそのものに対して盛んに疑問を呈しており,行方が混沌としてきた。

 一方で内藤副大臣が11月12日に行った記者会見で「地域の情報発信,例えばコミュニティFMとか,地域に根差した新産業…」と述べており,検討チームで協議する主眼の一つが,UHF帯を使ったエリア限定ワンセグにあることは間違いない。

 UHF帯を利用できれば,帯域は地上デジタル放送のワンセグと同じである。チャンネルさえ合わせれば,現行のワンセグ端末が利用できる。UHF帯を利用したエリア限定ワンセグの早期制度化を目指す動きは別にもあるが,検討チームの発足により遅くとも2012年の制度化は視野に入ったと言えそうだ。

モバイルBBの用途は特に慎重な対応が必要

 ただし,避けて通れないのは,地上デジタル放送への影響がないことの証明である。内藤副大臣自身も,「慎重な実証実験も必要」としており,念には念を入れた検証が行われるだろう。筆者は,特にモバイル・ブロードバンド型に対して疑問がある。例えば「ビル陰で本当にコグニティブ無線技術(電波の使用状況を認知する技術)が使えるのか,極端に電波のレベルが下がるポイントが生じないのだろうか」という点である。モバイルは不特定多数に機器がいきわたり,後戻りできないので,定量的で精緻な検討を望みたい。