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NTT 環境エネルギー研究所
主幹研究員
染村 庸

 前回は,ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)における標準化の動向について紹介し,国際標準化を進めるための準備検討会「ICTと気候変動に関するFG (Focus Group on ICTs and Climate Change)」での検討結果や,FG以降の具体的な勧告に向けた研究委員会SG5 (Study Group 5) における課題について解説した。

 最終回の本稿では,日本がFGへの寄与文書として提案した総務省のガイドブック『ICTを環境にやさしく活用するために』(2007年4月発行)の紹介,環境ラベルやカーボン・フットプリントの制度化の動き,グリーンICTの標準化が企業にもたらすメリットと有効な活用方法などについて解説する。

環境に配慮したICT活用のガイドラインを策定

図1●総務省が作成した環境に配慮したICT活用の指針をまとめたガイドブック
図1●総務省が作成した環境に配慮したICT活用の指針をまとめたガイドブック

 総務省では,ICTシステムが地球環境に与える影響を明らかにするため,「環境負荷低減に資するICTシステム及びネットワークの調査研究会」(2006年11月~2007年2月)を立ち上げ,ICTシステムの環境負荷低減に関する最新の技術動向や各種取り組みを調査した。この検討結果は2007年4月発行の報告書にまとめられている。これに併せて,一般ユーザー向けにも,ICTシステムが環境に与える『マイナスの影響」を抑え,「プラスの効果」を高めるための指針となるガイドブック『ICTを環境にやさしく活用するために』を作成した(図1)。

 前回も紹介したとおり,国際標準化を進めるための準備検討会FGのミッションの一つが,「ICT機器・システムの省エネルギー化に向けた取り組み及びICT利活用によるCO2排出量削減に向けた取り組みのためのガイドライン」の作成であった。日本はこうした議論を先導するために,ガイドブック『ICTを環境にやさしく活用するために』を寄与文書として提案し,FG成果文書の一つとして採用された。

 このガイドブックは,ICTユーザーに対し,主に次の2つの視点から環境配慮に取り組むように呼びかけている。

(1)ICTシステム使用時の環境への「マイナスの影響」を抑え,「プラスの効果」を高めるように,ICTシステムを利用する。

(2)ICTシステムの製造や廃棄・リサイクルに対しては,これらが与える環境への影響に直接関わりを持つ事業者に対して,‘購入者’の立場から環境配慮を促す。

 具体的な取り組みとしては,次の5つがポイントとして挙げられる。

1.環境に配慮したICTのしくみ・技術を取り入れる(図2
 連載の第3回でも紹介したが,ICT利活用による8つのエネルギー消費削減効果(物の消費,電力消費・エネルギー消費,人の移動,物の移動,オフィススペースの効率化,物の保管,業務効率化,廃棄物)を考慮して,ICTシステムの導入を決定すると効果的である。

 このとき,ICTシステム使用時や使用後に発生する環境への影響(ICT機器の電力消費,紙の消費など)を事前にICTシステム導入段階で考慮し,環境に配慮した仕組み・技術を取り入れることが重要。各チェック項目について,現状の消費量(ICTシステム導入前の実績)を確認するとともに,ICTシステム導入後の予測値を試算することで,高い導入効果が期待できる。

図2●ICTのしくみ・技術を取り入れる
図2●ICTのしくみ・技術を取り入れる
図3a●環境に配慮したICT機器を選ぶ
図3a●環境に配慮したICT機器を選ぶ
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2.環境に配慮したICT機器を選ぶ
 ICT機器による電力消費を削減するために,省エネルギー型の機器を選定するとよい(図3a)。また,人の健康に悪影響を与える物質が含まれないことや,ライフサイクル全体で環境負荷が小さくなるように設計された機器を選ぶことも重要である。

 ICT機器を選ぶ際には,目安として,各種の「環境ラベル」を参考にする(図3b)。「環境ラベル」をどのように活用するかについては,次の項で詳しく述べる。

図3b●主なICT機器の環境ラベル
図3b●主なICT機器の環境ラベル