激動の2009年、IT業界でもさまざまな出来事があった。ITproに掲載した数多くの記事の中から、どんな記事がよく読まれたのかを示すアクセスランキングを見つつ、2009年を振り返ろう。
ここでは、ITproに掲載された全ニュースを対象にアクセス数を比較し、上位50位までを「ITpro総合ランキング」として掲載した。上位10位には、低価格のミニノート・パソコン、いわゆるネットブックに関する記事が2件、マイクロソフトの新クライアントOSであるWindows 7の記事が2件、それぞれランクインしたのが目立つ。
ネットブックが続々
ネットブックに関するニュースで最もよく読まれたのは、ソニーのネットブック「VAIO type P」に関する記事(関連記事)。ネットブック市場に国内の大手パソコン・メーカーが続々と参入を表明する中、ようやく発表されたソニーの製品は他社の2倍近い価格にもかかわらず注目を集め、同社のブランド力が健在であることを見せつけた。また、NECは1月にネットブックの第2弾を発表(関連記事)。これらの製品に対する認知と関心が高まり、普及が進んだ1年だった。
Windows 7の滑り出しは順調
Windows Vistaに対するユーザーの不満などを調査したうえで開発されたというWindows 7は、2009年10月22日に一般向け販売が始まった(関連記事)。マイクロソフトの思惑通りWindows 7は、発売後15日時点でパッケージ販売本数がWindows Vistaの約2.3倍と順調な滑り出しを見せた(関連記事)。
Windows 7関連ニュース記事のうち、最もよく読まれたのは、発売前の5月に掲載した「Windows 7 RCの隠し球、XP互換機能『Windows XP Mode』ベータ版を試す」である。Windows 7を気にしつつも、Windows XPの環境を簡単には捨て去ることができないユーザーの状況を伺わせる。ほかには「XP/VistaからWindows 7へのアップグレード方法、詳細が明らかに」や「『XPからWindows 7へのメール移行は要注意』---マイクロソフトが説明会を開催」など、環境の移行に関する記事が関心を集めた。
マイクロソフト関連のニュースではほかに上位から、9月にテクニカルプレビューが限定公開された「Web版の無料Office」(関連記事)、3月20日に正式版が公開された「Internet Explorer 8」(関連記事1、関連記事2)、9月30日に提供を開始した無料のウイルス対策ソフト「Security Essentials」(関連記事)などが50位以内にランクインしている。
グーグルが日本語入力機能を公開
IT関連企業の中で注目を集め続けているグーグル。グーグル関連のニュースは、「Googleの全検索結果に『このサイトはコンピュータに損害を与える可能性』、人為的ミスで」「グーグルが語る『働きがいのある会社の作り方』」「グーグルが「Google 日本語入力」ベータ版を公開」の3本がランクインした。12月3日に公開した「Google 日本語入力」は、米Googleのクラウド・データベースを基に自動生成した辞書を搭載し、同社の検索エンジンでおなじみの「もしかして」機能と同等の予測入力機能を備える。2010年もグーグル関連のニュースは高い関心を集めそうだ。
JALでシステム障害が相次ぐ
システム障害やセキュリティ事件を報じたニュースは、毎年、多くのアクセスを集める。2009年も例外ではなかった。社会的なインパクトが大きかった出来事として50位以内にランクインした記事は、6月3日早朝に発生した日本航空(JAL)のチェックインシステムの障害(関連記事)と、三菱UFJ証券システム部の元社員による顧客情報売却事件(関連記事)に関するニュースがある。
JALのシステム障害は、国内線の全面チケットレス化に関連する新機能を追加するための、チェックインシステムと予約発券システムのバージョンアップ作業が原因だという。JALでは8月2日にもシステム障害が起きており(関連記事)、こちらも国内線のチェックインシステムと予約発券システム間のデータのやり取りに問題があった可能性があるとしている。
三菱UFJ証券の顧客情報売却事件は、システム部の部長代理だった元社員が、約148万人分の顧客情報を不正に取得し、約5万人分の情報を売却したというもの。システムに対するアクセス権限を持つ者が決まった方法を装って行う不正は、それを発見するための有効な仕組み作りが難しいという問題を改めて浮き彫りにした。
Webウイルスが猛威
セキュリティ関連のニュースもアクセスランキング上位の定番だ。よく読まれたのは、Webページに感染する(埋め込まれる)タイプのウイルス(ここでは「Webウイルス」と呼ぶ)に関する記事である(関連記事1、関連記事2)。セキュリティ対策を適切に施していないパソコンでは、Webウイルスが埋め込まれたWebページにアクセスするだけで被害に遭う恐れがあるという。
パソコンの利用者は、常に最新のWindows Updateなどを適用したり、ウイルス対策ソフトのパターンファイルを最新版に更新することで被害に会わないよう留意する必要がある。サイト管理者はさらに、サイトのセキュリティ対策をもう一度見直して、“加害者”にならないようにする必要があるだろう。
オラクルがサンを買収
ある年齢以上の人にとって特にショッキングだったニュースは、米オラクルが米サン・マイクロシステムズを買収したことだろう。オラクルとサンは4月20日(米国時間)、オラクルがサンを74億ドルで買収することで合意したと発表した(関連記事)。サンを巡っては、米IBMや米ヒューレット・パッカードも買収に名乗りを上げていたとされる。オラクルはサン買収によって、ソフトとハードの両方を備えた、統合的なITベンダーへと業態を拡張する考えである。
その一方で、2008年にSunが買収したオープンソースのデータベース「MySQL」に対するオラクルの扱いを懸念する声も聞かれた。データベース最大手のOracleにとって、オープンソースのMySQLは事実上最大の競合製品であるからだ(関連記事1、関連記事2)。オラクルはその後、米国時間12月14日に、MySQLの競争力を維持する意向を示したが(関連記事)、今後の動向を見守る必要があるだろう。