PR
Q 仕事が忙しく運動不足で太ってきたので,3カ月前から毎朝ジョギングを始めました。しかし,1カ月くらい前から運動後に胸に激しい痛みや違和感を感じます。健康診断では中性脂肪が高くHDLコレステロールが低いと言われています。タバコも1日20本吸っています。(男性,36歳,プロジェクト・マネジャー)

 「高脂血症」(中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mmHg未満)で喫煙しており,運動後に胸部の痛みと違和感があるという症状を見ると,「狭心症」が最も可能性が高い病態です。

 質問者のように運動したり,重いものを持ったりしたときに発作症状が出るタイプの狭心症を「労作性狭心症」と言います。これは,主に「冠動脈」(心臓を取り囲むように走って心臓の筋肉に酸素や養分を送っている血管のこと)が動脈硬化によって内径が狭くなること(狭窄)が原因です。一方,睡眠中(朝方が多い)や安静時に突然,「胸痛発作」を起こすタイプを「安静時狭心症」または「異型狭心症」と呼びます。これは冠動脈の一部に一過性の痙攣(けいれん)が起こり瞬間的に血流が途絶えてしまうことが原因と考えられています。

 質問者の場合は,運動時に症状が出るわけですから,前者の「労作性狭心症」に当たると考えられますので,すぐに循環器の専門医師に検査してもらうことをお薦めします。

 病院では,「トレッドミル検査」(ベルトコンベアの上を心電図を着けながら歩いたり走ったりする検査)などで,冠動脈の循環不全状態を確認します。さらに,「冠動脈造影検査」(カテーテルを通して造影剤を注入し連続的なX線撮影をする検査)で,実際にどの冠動脈にどのくらいの狭窄があるのかを確認します。

 狭心症の治療は,発作時に使う舌下錠(ニトログリセリンなど)を処方する薬物療法が基本ですが,薬物を使っても発作が収まらない場合には,狭窄した冠動脈を広げるために心臓カテーテルを使った手術(カテーテル先に着いている風船を狭くなった場所でふくらませて血管を広げる手術)を行います。特殊な合金でできた網の目状の筒(ステント)を血管の内側に定着させて補強することもあります。血管内で小さな刃を回転させ,硬くなった動脈硬化部分を切り取る「動脈硬化切除術」を行うこともあります。これらの方法でうまくいかない場合や複数の冠動脈に病変が広がっている場合は,外科的に大腿部や腕などの静脈を切り取って,冠動脈の一部として利用する「冠動脈バイパス手術」を施します。

 狭心症がひどくなると「心筋梗塞」に至ります。狭心症は冠動脈の目詰まりですが,心筋梗塞は冠動脈が梗塞,つまり完全に血液の流れが途絶える病態です。狭心症発作の持続時間は,1~5分程度で長くても15分以内ですが,心筋梗塞の持続時間は15分以上で数時間続くこともあります。冷や汗,動悸,息切れ,めまい,強い恐怖感も出ます。この場合は,すぐに救急車を呼ばなければなりません。

 狭心症と診断されたら,高血圧,高脂血症の改善と食生活,生活習慣の見直しが必須です。特に喫煙は厳禁です。食事は,動物性脂肪を減らし,生野菜を多く取る必要があります。減塩(1日7g以下)も重要です。さらに過度の疲労,睡眠不足,過密なスケジュール,精神的ストレスなども発症や症状悪化の原因と言われています。

浜口伝博
産業医
産業医科大学医学部卒業,専属産業医として東芝,日本IBMに勤務し,産業医活動のほか,健康管理システム開発を手掛ける。2005年9月からハマーコンサルティング代表。日本産業衛生学会理事,日本橋医師会理事,産業医科大学非常勤講師。著書は「健康診断ストラテジー(バイオコミュニケーション,共著)」など多数。日本産業衛生学会認定指導医,労働衛生コンサルタント