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Q 大手システム・インテグレータでSEをしています。以前一緒に仕事をしていたグループ・マネジャーから,「デートしよう」,「旅行に行こう」などと執拗に誘われています。とても世話になっただけに,はっきり断り切れないで困っています。仕事も手に付きません。どう対応すればいいでしょうか。(女性,28歳,SE)

 これは,そのマネジャーによる「セクシャル・ハラスメント(セクハラ)」に当たると言っていいでしょう。

 一般にセクハラとは,(1)性的言動があること,(2)性的言動が相手の意に反していること,(3)性的言動が職務を遂行するうえで一定の不利益を与える,あるいは就業環境を悪化させるものであること――という3つの要件を満たす行為を指します。

 質問者の場合,(1)相手から性的言動があり,(2)質問者にとっては意に反するものであり,(3)質問者の業務遂行にも悪影響を与えているようです。つまり,セクハラの3つの要件を満たしているわけです。

 セクハラは「対価型」と「環境型」に大きく分類することができます。「対価型」は,性的関係を拒否されたことが原因で相手を解雇したり,降格したり,減給したりする行為を指します。

 一方の「環境型」は性的な言動によって相手に不快感を与えたり,仕事上の能力の発揮に重大な影響を及ぼす行為を指します。質問者のケースは,この「環境型」のセクハラに当たりそうです。

 職場における性的言動をどう受け取るかは,受け取った人によって差がありますが,「不快」と感じた場合はきちんと意思表示することが重要です。

 質問者のケースでは,相手が以前仕事で世話になったマネジャーであるために,むげに断れない気持ちがあるのでしょう。しかし,不快であることの意思表示をしなかった場合,相手はあなたが受け入れているものと誤解する恐れがあります。

 質問者には,まず「断りたいのに断れない」という“葛藤”がどこから来ているのか,自己分析してみることをお薦めします。

 「断ることによって世話になった人の機嫌を損ねたくない」,「よく思われたい,嫌われたくない」,「言うタイミングが見つからない」など,自分が断れない理由をまず明確にするのです。そうすることで,意思表示する覚悟を固められます。

 次に相手にどう意思表示するかですが,もしあなたの職場に信頼できる人がいるのであれば,その人から相手に伝えてもらうのが最も良い方法です。「第三者に知られたら世話になったマネジャーを傷付けてしまうのではないか」と懸念するのであれば,メールや手紙で意思表示すればよいでしょう。

 自分の本当の気持ちを素直に伝えることができると,意外に「あなたがそのことで苦痛を感じているのは僕の本意ではないので謝りたい」,「あなたとは仕事を通じて親しい関係になっていたのに,最近は何かよそよそしさを感じて気になったので,頻繁に声を掛けていただけだった」といった答えが返ってきて,セクハラは収まるものです。

 それでも,自分の立場を利用して強引に誘ってきたら,勇気を持って,社内のセクハラ相談窓口に申し出るべきです。「男女雇用機会均等法」により,企業は職場のセクハラを防止するための雇用管理上必要な配慮を義務付けられていますので,なんらかの措置を取ってくれるはずです。

武藤清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など