PR
Q 最近仕事量が多くなり,勤務時間内ではさばききれません。上司の仕事量の振り分け方にも疑問があります。とにかく仕事とプライベートの時間が区別できなくなってきています。周りで暇にしている同僚を見ると無性にイライラして,腹が立ちます。このままではストレスがたまる一方です。(男性,30歳,SE)

 ITベンダーでは,急な仕事の発注や顧客の無理な要望などのために,過重労働に追い込まれることがよくあります。そうなると,質問者のように仕事を自宅に持ち帰り,プライベートな時間を仕事に使わざるを得なくなります。

 仕事自体が楽しいならまだしも,急に割り振られた仕事や顧客に振り回される仕事は,大きなストレスになります。気分転換ができずに長時間の作業が続くと集中力が落ち,ミスやエラーも多くなります。その結果,業務遂行能力が低下してしまいます。

 さらに,自分が一生懸命働いているときに暇そうな同僚がいると,その同僚の言動が目に付いたり,鼻に付いたりして,イライラするのは当然のことでしょう。これは一種の「ノイローゼ状態」と言えます。

 こういう場合は,手っ取り早い気分転換の方法をお薦めします。その1つは「アロマテラピー」です。これは,植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)やハーブなどの芳香植物の香りを嗅ぐことでリラックスする方法です。机に置いて時々その香りを楽しめばよいでしょう。

 2つ目は,深呼吸をしてみることです。吸い込むときは5秒くらいかけてゆっくり吸い込みます。吸い込んだ後も,5秒くらい空気をため込んでから,静かにゆっくり吐き出します。こうすることで血中に炭酸ガスが増え「セロトニン」の量が多くなると言われています。セロトニンは脳の活動を高める神経伝達物質の1つです。

 できれば吸い込んだときに,その空気が体内のどこに吸収されたか,また吐くときにそれがどんな器官を通って出て行くのかをイメージすれば,より効果が上がります。吐くことに重点を置きながら4~5分やってみてください。呼吸と自分が一体化して,集中力が高まります。

 仕事が長期にわたるようであれば,食事療法も有効です。ストレスにさらされると,「副腎(腎臓の上にあるホルモン分泌器官)」から「コルチゾール」という副腎皮質ホルモンが血中に分泌されます。これは,ストレスに対抗するホルモンと言われていますが,この働きを強化するのが「パントテン酸」という「ビタミンB複合体」です。パントテン酸は,納豆や肉類,レバーなどに多く含まれています。

 副腎皮質ホルモンを作るのに欠かせない「ビタミンC」とその働きを助ける「ビタミンE」を摂取することも大切です。ビタミンCは,ほうれん草やキャベツ,トマト,ピーマンなどに,ビタミンEはタラコやうなぎ,かぼちゃ,アボカドなどに多く含まれています。こういった食材を使った料理を食べることもお薦めです。

 ストレスへの対処方法(ストレス・コーピング)はこのようにいくつかあるのですが,これらはいわば「対症療法」に過ぎません。根本的には上司の仕事の配分を改善しなければ,解決にはなりません。

 過重労働は病気の発生原因になり,労働災害の対象にもなります。このため不公平に感じていることや自分の成果については,上司に素直に伝えることが大切です。

武藤清栄
東京メンタルヘルスアカデミー所長
1974年東洋大学社会学部卒,76年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒。民間相談機関の「心とからだの相談センター」主任カウンセラー,サンシャイン医学教育研究所,秋元病院精神科カウンセラーを経て,現在に至る。関東心理相談員会会長。日本精神保健社会学会副会長。著書に「雑談力」,「号泣力」(いずれも明日香出版社),「本音力」(ロゼッタストーン)など