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 外部のパートナ企業などがNTT東西のフレッツ回線ユーザー向けに上位レイヤー・サービスを提供するのに使うサービスの代表が,コンテンツ配信系のサービスである。現行サービスは,東西がそれぞれNGN向けの「フレッツ・キャスト」を用意するほか,東日本の地域IP網向けの「ドットネットEX」,西日本のプレミアム網向けの「フレッツ・v6キャスト」と4サービスがある。

 いずれも,IPマルチキャスト機能を使ったコンテンツの一斉配信,ユニキャストのストリーム配信などが可能で放送型の映像サービスを提供する事業者に利用されている。「これだけの規模のマルチキャスト対応ネットワークはほかにない」(井上取締役)と自負するように,フレッツ・サービスの一つの特徴にもなっている。

 ただし,コンテンツ配信にも課題がある。それは,NGNと地域IP網/光プレミアム網を合わせたフレッツ・ユーザー全体を対象に配信できるメニューがないことだ(図1)。フレッツ・キャストだけを利用しても,配信対象は東西合わせて100万に満たない。1200万のフレッツ・ユーザー全体を対象にコンテンツを配信するには,これら4サービス全部に契約する必要がある。コンテンツ事業者にとっては大きな負担だ。

図1●コンテンツ事業者向けの配信サービスは4種類でそれぞれ配信先が限られる<br>フレッツ・ユーザー全体を対象とした放送型サービスを提供するには現状では東西,新旧それぞれの網に配信設備を接続しなくてはならず,コスト高になる。
図1●コンテンツ事業者向けの配信サービスは4種類でそれぞれ配信先が限られる
フレッツ・ユーザー全体を対象とした放送型サービスを提供するには現状では東西,新旧それぞれの網に配信設備を接続しなくてはならず,コスト高になる。
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 マルチキャストを利用した一般ユーザー向けのIP放送サービスが,いまだにNTTぷららの「ひかりTV」とUSENの「GyaO NEXT」の2サービスしかないのも,こうした事情で参入のハードルが高いからである。NTT東西もこの問題は認識しており,今後,フレッツ・キャストから地域IP網などの既存ユーザー向けにも配信可能にするオプションの追加を検討している。

回線認証機能を追加したもの利用企業はなし

 NGNと旧世代網とでサービスが分断され,フレッツ・ユーザー全体を対象にしたサービスを開発しにくい問題は,コンテンツ配信以外の上位レイヤー・サービスにも言える。NGNの通信機能を利用するためにプラットフォーム事業者向けに提供するインタフェースの一つ,SNIの活用が進んでいないのはここに一因がある。

 フレッツ・キャストは,マルチキャスト配信とユニキャスト通信が使え,帯域確保機能や今年10月から提供を始めた「回線情報通知機能」を使ったサービスを開発できる,現時点では唯一のSNIサービスでもある。例えばオンライン・バンキング・サービスをフレッツ・キャスト上に構築すると,フレッツ 光ネクスト回線に個別に割り当てられた回線IDを取得して,会員が事前登録した回線から接続していることを確認できる。しかし映像配信と同様,NGNのユーザー規模はまだフレッツ全体の約10分の1に過ぎないため,この機能を活用するサービス事業者は今のところ現れていない。

 NTT東西が重視している,パートナ企業との提携によるサービス開発でも,こうしたユーザー規模の問題がつきまとう。フレッツ光回線向けの独自機能を使ったサービスを開発しても,潜在市場は最大でも1200万にとどまってしまう。

 今のところ,NTT東西と協業するパートナ企業の多くは,インターネット上で同じサービスを提供しながら,NTT東西のフレッツ光の新規販売と組み合わせたキャンペーンで協力するケースが目立っている(表1)。「パートナ企業に対しては,まずは我々のサポート体制や,販売チャネルといったリソースを使ってもらう形の提案をしている。フレッツ限定のサービスでの提携にはこだわらない」(井上取締役)という姿勢で,提携先を広げていく考えだ。

表1●NTT東西のフレッツ光シリーズと提携する主な事業者
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表1●NTT東西のフレッツ光シリーズと提携する主な事業者