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エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知 エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知

 当地の米AT&TのテレビCMといえば携帯電話が定番だったが,このところすっかり「U-verse(ユーバース)」一色となった。高速インターネット接続と多チャンネル・テレビを合わせた光ブロードバンド・サービスである。

 米国のブロードバンドでは,西半分はAT&Tの「U-verse」,東半分は米ベライゾン・コミュニケーションズの「FiOS(ファイオス)」と,通信事業者の光ブロードバンドが台風の目となっている。これら通信事業者と米コムキャストや米タイム・ワーナーなどのCATV陣営が,「ネット」と「テレビ」の合わせ技によるシェア争いを展開している。

 なお,AT&TはFTTN(fiber to the node)とIPTV,ベライゾンはFTTHとRF方式の映像伝送という組み合わせとなる。後者は技術的にはIPTVに含まれないが,ここでは米国での一般的な呼称に倣い,両者を併せIPTVと呼ぶことにする。

急成長する光ブロードバンド

 光ブロードバンドのコンテンツは何といってもテレビである。米国では,何らかの有料多チャンネル放送に加入している世帯が全体の85%に達し,そのうち65%がCATVである。CATVは高速ネット接続も提供しているため,通信事業者がブロードバンド・サービスを拡張するにはCATVとの対決は避けて通れない。

 テレビに関して,米国ではCATV陣営が頑強な既存勢力であり,通信事業者の挑戦を受ける立場である。その独占的な立場に反発を覚えるユーザーも少なくなく,「高い料金」,「保守やカスタマ・サービスの質が低い」といった批判を浴びてきた。

 一方の通信事業者は「挑戦者」として,テレビ放送の営業免許取得プロセスの簡易化など,規制面で優遇されている。この立場を生かして,IPTVは着々と設備建設を進め,シェアを伸ばしている。2009年6月時点でのテレビ契約が約400万世帯(AT&T+ベライゾン)であり,まだCATVの6400万世帯とはけたが違うが,前年から2倍増という勢いで急速に成長している。

総力戦で底力をみせる通信事業者

 通信事業者の強みは,CATVに比べて豊富な伝送帯域を保有していることだ。通信事業者はこの利点を生かし,帯域を食うHD(高精細)チャンネルを数多くそろえ,より高速なネット接続を提供している。確かにこれらの要因でCATVからIPTVへ切り替えたユーザーもいる。

 またユーザーがCATVに抱いていた様々な不満に対して,通信事業者は着実に対応している。さらに長年の電話系サービス販売におけるテレマーケティングなどの「個別撃破型営業」のノウハウを生かして,地道にユーザーを増やしたことも理由に挙げられる。

 結局,光ブロードバンドやIPTVの好調は,何か決定的な“魔法のつえ”が働いたとは言い難い。逆に言えば,“魔法のつえ”がなくても,通信事業者が総力戦をすればこれだけの実績を上げられる,ということでもある。

海部美知(かいふ・みち)
エノテック・コンサルティングCEO
 NTTと米国の携帯電話ベンチャNextWaveを経て,1998年から通信・IT分野の経営コンサルティングを行っている。シリコン・バレー在住。
 米ベライゾン・ワイヤレスがAndroid端末のテレビCMで,米AT&Tよりも3Gカバレッジが広いとする比較広告を開始。AT&TはCMの中止命令を裁判所に要請したが却下された。今まですみ分けていた両雄が,いよいよ正面対決に入ったようで,今後面白くなりそうである。