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 菓子メーカーの米ナビスコ(現・米クラフトフーズ)に20年間勤め、2006年に英キャドバリーの北米IT(情報技術)チーム長として入社、2008年に全社のCIO(最高情報責任者)に昇格した。それまでのCIOはロンドンにいたが、子供がまだ学校に通っているうえ、海外出張が極めて多いため、北米にとどまりたいと希望し、ニュージャージー州にある北米本社にCIOオフィスを構えることになった。

 キャドバリーは事業部門(ビジネス・ユニット)を世界の地域ごとに7つに分けている。これは各マーケットにふさわしい商品を、責任を持って迅速に提供するためであり、7部門にそれぞれITディレクターを配置している。このほかにCTO(最高技術責任者)がいて、私を含めた9人でテレビ会議を開き、世界中のIT戦略を練り、最も適した場所にふさわしいITを提供するのが、自分の役割だ。

 当社はデータセンターを米ヒューレット・パッカードに、ネットワークを英ブリティッシュ・テレコムに外部委託し、例えば既存システムにパッチを当てたり基本ソフト(OS)を更新したりする作業は、その道の専門家である彼らに任せている。なぜなら、当社はおいしいキャンデーやガムを早く安く消費者に提供することに注力したいからだ。

 私は商品と常時対峙しているビジネスが好きで、ナビスコに長くいた。キャドバリーも「商品(ビジネス)が第一」という思想が社内に深く根付いている会社である。だから「単なる技術屋」ではなく「ビジネスを愛する技術屋」には、とても働きやすいところだ。CIOとしては、そういう志向を持つ優秀なスタッフを雇うことも重要な仕事だ。

 私はもともと技術屋ではなく、ナビスコでビジネス部門とIT部門を行ったり来たりしていた「ハイブリッド」だ。「技術そのものは目的ではない。ビジネスが最初で、技術は手段にすぎない」と信じているし、それがCIOになる条件だと思う。

 現在手掛けている最も大きなプロジェクトは、米オラクルのCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ソフト「シーベル」の導入である。小売店と一緒に展開する商品プロモーションは、その約5割が目標に到達しないというのが事実だ。CRMは、おそらくトップの10%の営業担当者が肌で知り、あるいは個人的なデータの積み重ねで成功しているかもしれないが、それでは不十分だ。シーベルを使って販売履歴を分析し、小売店ともっと密接な販売計画を練ることができるようにする。最初は今年中にオーストラリアで導入し、来年は北米、その後日本などに広げていく。

CRMでプロモーションの成功率を向上

ウェイン・シャーツ氏
ウェイン・シャーツ氏
1824年にキャドバリー兄弟が食料品店を始め、その後ココア・チョコレート製造業者として、英国王室御用達になった。現在はガム「クロレッツ」やキャンデー「ホールズ」、チョコレート「キャドバリー」などのブランドを擁し、菓子メーカーとして世界2位の売上高54億ポンド(約8620億円)を誇る。

 なぜオーストラリアからかというと、CRMを最も必要とし、そこに投資をする準備ができている国だからだ。インドや南米で始めたいといっても、彼らはCRMソフトよりも、営業担当者の携帯端末にもっと投資をしたいと言うだろう。このように、技術を先に持っていくのではなくて、マーケットの事情と需要に合わせる形で計画を進めている。

 複数のシステムに分かれている欧州各国の基幹業務システムを、独SAPのパッケージソフトに切り替える「ワン・ヨーロッパ」という計画も重要だ。欧州市場はかつてと違い、標準化したシステムが急速に必要となってきている。なぜなら、原料調達・製造・販売の過程を効率化するバリューチェーン・マネジメントを始めようと決断したためで、それには国ごとに複数に分かれたシステムでは乗り切れないからだ。

 また、日本のアサヒビールがキャドバリーのオーストラリアの飲料事業、シュウェップス・オーストラリアを買収したのに伴い、オーストラリアの飲料関連システムをアサヒビールに移譲する。このプロセスは20~24カ月かかると見られ、大変な労力を要する。

 多岐に渡る仕事の中で、当社が必要とするITをグローバルな規模で見極めていくためには、チームプレーが欠かせない。今年7月、英国に私と7人のITディレクター、人事、財務の代表など11人が集まり、1週間の戦略会議を持った。まずは、消費者や経済の動向あるいは問題点を浮き彫りにするために当社の「ビジネス・ロードマップ」を作り、そこからITが何をできるかを探り出す4カ年の「IT戦略計画」を練った。

 例えばマーケティングにしても、今や広告の要にあるのはITだ。モバイルやインターネットなど、広告とメディアプランの世界をITが変えている。このような時代に、CIOを務めるのは大変エキサイティングなことである。

ウェイン・シャーツ氏
英キャドバリー最高情報責任者(CIO)
旧・米ナビスコ(現・米クラフトフーズ)で、財務、営業を経て、IT分野にもかかわり、SAP導入などに貢献。その後、5年間コンサルティングビジネスに携わった後、2006年に英キャドバリー入社。2008年からCIO