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 前回「分厚いだけのRFPは読んでもらえない」の項で述べたように,ただがむしゃらに頑張ってRFPや提案書の分量を増やしても,その努力や労力は無駄になり,かえってマイナスの結果をもたらしてしまうことは多い。

 繰り返しになるが,RFPと提案書は法人間のコミュニケーションのためのツールであることをきちんと認識し,相手の立場で考えることが肝要である。ひと言で言ってしまえば「読みやすく書く」ということである。まったく当たり前のことで,拍子抜けする読者もいるかもしれない。しかし,そのような読者が今まで目にしてきたRFPや提案書は読みやすいものばかりであったか,と問えばそうではないだろう。

 むしろ,何をアピールしたいのかポイントがよく分からないものや,ゴチャゴチャと細かい字と意味不明の図が詰め込まれたものを目にすることが多いのではないだろうか。それらは自分(自社)が書きたいことを一生懸命書いているだけであり,読む側の都合を考えていない文書である。「読んでもらうためにはどうすべきか?」を常に問いながら,文書を作成することを実践していけば,それほど難しい問題ではないはずだ。

「本編」は20~30ページ程度に抑える

 あえて提案内容を無視して,文書の品質だけを見た場合,良いRFPや提案書の基本要素は以下の四つである(図4)。

図4●良い文章の四つのキーワード
図4●良い文章の四つのキーワード

(1)漏れなく
(2)重なりなく
(3)少なく
(4)分かりやすく

 この四つの中で,相手(特に相手の上位の役職者,多くの場合意思決定者かそれに近い立場の人達)に読んでもらえるための基本要素は,(3)少なく,(4)分かりやすく,の二つである。そして実際に文書を作成するとき,「少なく」については,特に難しいと感じるであろう。

 文書に盛り込む情報量を少なくすることは,特に提案書を出す側のベンダーにとっては勇気がいることだ。提案書の枚数が少ないと,提案内容が薄いと思われないか,熱意が無いと思われないだろうかと心配になるのは当然のことだろう。またRFPにしても,少ない枚数では要求を具体化できない,書ききれないと懸念するのも理解できる。そこで,筆者が推奨する方法が「本編+別紙」の体裁にすることである。

 RFPでも提案書でも,本編は20ページから30ページ程度に抑え,要点のみを書く。RFPであれば趣旨(目的・背景・狙い)と業務要求・技術要求・運用要求の最も重要なもの(優先順位の高いもの)やそれらをサマリーしたものだけを記載する。それらの詳細は別紙を参照すれば分かるように構成をしておく。筆者がコンサルティングを行う場合は,必ずRFPはこの「本編+別紙」構成にする。

 また,RFPで指示する提案書作成要領の中に「提案書は本編+別紙構成とし,本編はxxページ以内とする」という指定をする。20~30ページ以内の分量であれば,多くの人が手に取る。この手に取ってもらうことがコミュニケーションという観点では非常に重要なのである。

 手に取ってもらうということは「話す・聞く」に例えれば,相手が目の前に座り会話に応じてくれる状況になったということだ。逆に言えば,手に取ってもらえないのは,話さえ聞いてもらえないのと同じである。本編をいかに「少なく」するか,つまり限られたページ数で要点をまとめるか,そこに書く側は留意すべきである。

 別紙の分量は,特に制限はしなくてもよい。ある情報を必要とする人だけがたどり着けばよいと割り切る。例えばサーバーの詳細なスペックに対する要求は,ハードウエア担当のエンジニアが読めばよいのである。

専門用語はなるべく使わず,色の多用を避ける

 次に「分かりやすく」であるが,これは「文章」「図解」「デザイン」という三つの要素をそれぞれ考慮して,向上を図るべきである。それぞれについて,以下に簡単に説明しておく。

・文章
 ITの専門用語はなるべく使わない,平易な表現を用いる,語調を合わせる,といったごく当たり前のことである。特に専門用語やIT略語(俗にいうアルファベット3文字略語)の乱用は非常に多く見かける。

・図解
 概念図,模式図,表,グラフなどの図解は,文章にすると複雑になってしまう事柄をひと目で相手に理解してもらうために非常に有効な手段である。しかしその半面,出来の悪い図解はむしろ相手の混乱と失望を招き,一発で「これはひどい」とネガティブな印象を与えてしまう。何を伝えたいか,ポイントを絞って描くことが肝心である。また,他人が見て意味が理解できるかどうか必ずレビューしてもらおう。

・デザイン
 色の多用を避けること,特に強調色となるような赤系統,黄色系統などは極力使用を避け,ここぞという所でのみ使用することを意識しよう。ページの大半が真っ赤っかな資料など誰も読みたいとは思わない。また,複数の担当者が分担してRFPや提案書を作成すると,ページごとに異なったレイアウト・パターンが混在していることがよくある。これは読み手に与える印象が悪いだけでなく,非常に読みにくい。ここも読む側の気持ちを考えて,全体的なレイアウト・デザインはきちんとそろえて作ることを心掛けたい。


永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。