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 本連載も最終回となった。実践編ということで,RFP作成の作業で使える手法やテクニック,あるいは留意すべき点などを解説してきた。繰り返しになる部分も多いが,最後に筆者が最も重要と考えているポイントを7つに整理してまとめてみたい(図5)。

図5●RFP作成時の七つの重要なポイント
図5●RFP作成時の七つの重要なポイント

(1)RFPは手段であって目的ではない
 極論を言えば,最適なパートナーとなるベンダーをひと目で見抜くことができるのであれば,RFPなど不要である。しかし,いろいろな要望や利害が複雑に絡み,コスト的にも経営に大きなインパクトを与えるシステム調達の決定は容易ではない。だからこそRFPが有効な手段として機能するのである。ただし,あくまでもRFPは手段であって,目的は最良のベンダーを見つけることであり,ひいてはシステム構築を成功させることだ。それによって,経営戦略や事業目標を達成させることが最終目的であることを常に意識しなければならない。

(2)趣旨(目的・背景・狙い)をきちんと決める
 これは繰り返し述べてきたことだが,しつこく述べるのはこの趣旨を軽視しているケースをしばしば見かけるからだ。特に,エンドユーザーよりも,情報システム部門の担当者など,ITエンジニアが軽視してしまう傾向があるので,注意したい。

(3)RFPの構造を理解し,アウトラインを先に作る
 時間的余裕がないからと,とりあえず書けることろから書こうと作業を始めてしまうと,漏れやバラつきなどが発生し,RFPの品質が落ちてしまう。RFPの基本的な構造を理解し,何をどれくらい作るか最初にある程度計画し,そのアウトラインに沿って作業を進める方が「急がば回れ」で結果的には短い時間でできる。

(4)エンドユーザーを当事者に巻き込む
 システムを使うのはエンドユーザーである。そのエンドユーザーが他人事では,どんなにITエンジニアが頑張っても,良いシステムは導入できない。良いシステムとはスペック的に高性能なものではなく,趣旨で定義した目的を達成し,かつエンドユーザーの満足度が高いシステムなのである。

(5)RFP作成~ベンダー選定もプロジェクトである
 システム開発だけがプロジェクトではない。RFP作成からベンダー選定の調達フェーズも一つのプロジェクトである。このRFPプロジェクトのマネジメントにおいても,PMBOKなどの管理手法は当然のことながら適用可能である。特にプロジェクト・マネージャはその点をきちんと理解し,プロジェクト管理の基礎知識はぜひとも勉強して(あるいは勉強しながら)プロジェクトに臨んでほしい。

(6)相手の立場を考えたコミュニケーションを心掛ける
 RFPプロジェクトはさまざまなコミュニケーションが求められる。対エンドユーザー,対情報システム部門,対役員会,対複数のベンダーといったように異なる立場の相手とのコミュニケーションの連続である。また,RFPと提案書という文書を介した法人同士のコミュニケーションという一面もある。常にコミュニケーションの相手が誰であるか,その相手がどのような立場なのかを考慮することを忘れないでほしい。

(7)ベンダー選定は「知・利・情」で判断する
 RFPプロジェクトの最大の山場は採用ベンダーの決定である。その決定においては三つの軸を持って判断すべきである。その三つの軸を端的に言うと「知・利・情」である(図6)。なお,この「知・利・情」に関しては「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)に詳細を記しているのでそちらを参照いただきたい。

図6●ベンダー選定の三つの軸「知・利・情」
図6●ベンダー選定の三つの軸「知・利・情」

・知=論理性。提案の内容,完成度。提案書が論理的に書かれていて,内容が分かりやすいか。

・利=投資対効果。予算内に収まっているか,超えている場合は許容できる範囲か。金額に見合った定量効果・定性効果が期待できるか。

・情=熱意。この案件を一緒にやるパートナーとしてふさわしいか。やる気と責任感の両方を持っているか。

 以上,本連載が多少なりとも読者のRFP作成やベンダー選定の仕事のお役に立つことができれば幸いである。


永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。