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 長きにわたって続いた自由民主党中心の政権から,民主党中心の政権に代わって3カ月半が過ぎた。政権発足後,新政権は政権公約に掲げた原則に沿って,矢継ぎ早にICT関連の政策を実行に移し始めている。

 ICT業界にとって注目すべき新政権の具体的な動きは,(1)原口一博総務大臣肝いりの「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)の議論,(2)総務省から放送・通信の規制部門を分離させるという通信・放送委員会(日本版FCC構想),(3)2009年度補正予算の見直しと2010年度予算の策定に見えるICT政策の重点分野,(4)温暖化ガス90年比25%削減の国際公約がICT分野に与える影響,という4点だ。

 この中でも総務省が進めるICTタスクフォースは,新政権のICT分野の動きで最も重要な位置付けとなる。「鳩山由紀夫内閣すべてが共感できる大きな目標をタスクフォースで作り上げたい」と内藤正光総務副大臣が語るように,総務省が起点となって民主党政権のICT政策そのものにつなげる考えだからだ。ICTタスクフォースが扱う範囲は,日本のICT戦略全般に広がる。これまで国内に閉じて議論していた競争政策をグローバルな視点でとらえ直すほか,ICTを活用して社会的な課題をクリアしていく視点も含まれる。原口総務大臣はICTタスクフォースのポイントとして「世界との競争政策を視野に入れている点」を強調する。

 NTT問題は,これまでの組織に着目した議論から,グローバルな枠組みで検討する方向へと変わるだろう。総務省の枠を超えた部門横断的な取り組みについて原口総務大臣は,「私たちが一番大事にしているのはビジョン型の改革。個々の問題に対処する形では実現できない」と続ける。

 それに伴ってICTの定義は,技術や通信サービスそのものを表す従来の狭義なものから,あらゆるシーンにICTを溶け込ませるあるいはICTが支える社会システムという広義なものへと変化している。この意味のとらえ直しは,民主党政権の目指すICT戦略の方向性そのものと言えそうだ。

霞が関のルールに変化,政務三役に主導権

 これらの変化を実践するために民主党政権は,「官僚主導から政治主導へ」という公約に沿って政策決定プロセスを変更した。政策立案の主導権をこれまでの官僚から,大臣,副大臣,大臣政務官の政務三役に移したのだ(図1)。2009年10月30日に開催されたICTタスクフォースの第1回会合は,まさにその変化を象徴する光景が見られた。

図1●政権交代で変わった政策立案の主導権<br>大臣,副大臣,大臣政務官の政務三役が,政策立案から決定まで主導権を握る形に変わった。代表例が,政務三役主導の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)。政策立案は,従来のボトムアップ型からトップダウン型に変わる。
図1●政権交代で変わった政策立案の主導権
大臣,副大臣,大臣政務官の政務三役が,政策立案から決定まで主導権を握る形に変わった。代表例が,政務三役主導の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)。政策立案は,従来のボトムアップ型からトップダウン型に変わる。
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 NTTの三浦惺社長やソフトバンクの孫正義社長,NECの矢野薫社長などそうそうたるメンバーが顔をそろえる中,通常の総務省の会合では会議卓の一角を占めていた官僚の姿が無かったのだ。議事進行を務めたのは,政務三役の一人である長谷川憲正総務大臣政務官。これまでのように,官僚が要所要所で議論の方向性を示す場面は一切無かった。総務省で官僚が一言も口を挟まないで会合が進行したのは,恐らく初めてのことだろう。これも民主党による霞が関改革の第一歩にほかならない。