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日立製作所 地球環境戦略室 部長
IEC 環境配慮設計WG 国際主査
市川 芳明

 今回で本連載も最終回を迎える。2009年は、電子産業において温室効果ガス(GHG)問題に関連する規格化に大きな動きが見られた。年の後半からカーボンフットプリントの規格化の動きが活発化したほか、12月には気候変動枠組条約締約国会議(COP15)がデンマークのコペンハーゲンで開催された。筆者は、IEC (国際電気標準会議)TC111の議長として、初めての全体会合を10月末にイスラエルのテルアビブで開催し、その際にGHGアドホックワーキングの設置を提案、全会一致で承認された。最終回では、温暖化問題に関連する規格化の現状と将来の方向性を論じてみたい。

カーボンフットプリントの国際規格化が加速

 EuP指令はまだ欧州だけの制度であるが、世界的に環境政策ツールとして確実に取り上げられつつあるのが、カーボンフットプリントである。これは製品のライフサイクル全体、すなわち原材料の採掘から製品の廃棄に至るまで、その製品が直接および間接に排出するGHGの発生量を数値で評価し(図1)、これを公開するという制度である。欧州では将来の法制化がほぼ確実とみられている一方(フランスでは既に法案が出ている)、アメリカや日本でも導入が進んでいる。

図1●製品におけるカーボンフットプリントの考え方
図1●製品におけるカーボンフットプリントの考え方
図中にある電力や水は一例。すべての原材料には間接的にGHGの排出がある。また「CO2」は、二酸化炭素だけでなく、あらゆるGHGガスを温室効果において等価な二酸化炭素量に換算して取り扱う。

 この国際規格化の先頭を走っているのがISO TC207 SC1(温暖化ガスマネジメント)委員会だ。SC1委員会では英国のカーボントラスト社が推進役となり、BS2050という英国の国内規格をベースに、ISO 14067-1「製品のカーボンフットプリント-パート1:定量化」およびISO 14067-2「製品のカーボンフットプリント-パート2:コミュニケーション」を策定中である。

 2009年12月14日の時点でWD3(第3次作業部会原案)が発行されているが、2010年2月9日から東京で開催される会議において、さらに内容がもまれていくだろう。特に2009年10月のウィーン会合から参加しているThe Green House Gas Protocol Initiative(GHG Protocol Initiative)という団体のメンバーたちの活躍が始まると期待される。

 GHG Protocol Initiativeは、後で詳しく述べるように、GHG排出量報告の基となるルールを作った団体である。それまでの数回の会合には全く参加していなかったが、2009年11月に彼ら自身の規格原案を発行したため、ISOの会合に参加して整合性を取る必要が出てきたとみられる。また筆者自身も、IECの立場から積極的な提案を行うつもりである。すなわち、このISO TC 207 SC1の会議の場が、多くの利害関係団体の主戦場となっている。

 ISO 14067が定めるべきことは、すべての製品に当てはまるフレームワークである。その意味では現状の原案がBS2050に引っ張られて少し細かいところまで踏み込みすぎているように感じるが、ISO TC207の立場は原則論を定めることである。

 そこで、PCR(プロダクト・カテゴリー・ルール)という概念が導入された。各業界が、製品分野に適したPCRをそれぞれ策定することにより、具体的かつ実用的なカーボンフットプリントの数値が計算できる仕組みだ。今後はこのPCRを誰が作るか、PCRとして成立するための要件は何かといった議論に移っていくだろう。