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◆今回の注目NEWS◆

情報通信行政を統合 政府、新省の創設検討(産経ニュース、12月16日)

【ニュースの概要】総務省や経済産業省、文化庁など放送・情報通信分野の行政機能を統合した「情報通信文化省(仮称)」の創設を政府が検討していると、産経ニュースが報じた。複数の省庁が管轄している情報通信行政を一元的に管理して効率化するとともに、規制緩和で情報通信技術の発展を促すのが狙いという。


◆このNEWSのツボ◆

 複数省庁にまたがる情報通信行政を効率化し、戦略化していくために、総務省、経済産業省、文化庁などの関連部局を統合して新しい省を創設する検討が進んでいるとのことである。

 この手の話は、昔から頻繁に登場する。振り返れば、故橋本首相当時の省庁再編の時にも登場したが、この時は、結局、旧郵政省、旧自治省、旧行政管理庁が統合されて「総務省」が誕生した。

 しかし、「省庁を統合して一つの役所が、総合的な戦略を練って執行する」ことが、本当に効率的・戦略的な施策展開を実現するのだろうか。もし、そうだとすると、実際に政策の立案・執行がほぼ一元化されている日本の農業や医療サービスや医薬品製造業、建設業や金融業、航空産業は、「世界に冠たる産業」になっていなくてはいけないのではないか。

 しかし、実態を見ると寒々しい状況であることは筆者が指摘するまでもないだろう。日本のように国土が狭くて急峻な国では農業は劣位にならざるを得ないなどと考えるのもおかしい。日本と似たような国土環境であっても、農業が立派な国際産業になっている例はヨーロッパなどにたくさん存在する。

 現時点で、日本が世界的競争力を有すると胸を張れるのは製造業くらいで、最近になって、流通業やコンテンツ産業がやっと競争力を発揮し始めている、というのが実態ではないだろうか。

 ここで取り上げられている「情報通信産業」も、先に掲げた「政策が一元化されているはずの産業群」に比べると、国際的に見れば、まだマシな水準といえるかも知れない。そう考えれば、行政を一本化して一つの組織が全体を見れば、戦略が整い、競争力も強まるという主張は、単純に過ぎるのではないだろうか。

 なぜ、このようなことが起きるのだろう? おそらくどこの役所も政策の立案等にあたっては、「既存のプレーヤー」の状況を見て、その意見を聞くことが重視される。しかし、「既存のプレーヤーの状況や意見が重視される」ということは、どうしても「既得権を有する者」の声が大きくなるということでもある。

 イノベーションのジレンマではないが、技術や環境が大きく変化する際に、既存の企業は、どうしても「守り」に回る。このため、政策も「現状維持的」になり、新しい時代への適応が遅れがちである。

 考えてみれば、情報通信産業においては通信規制を巡って旧郵政省と旧通産省が、また知的財産保護を巡っては文部科学省と旧郵政省や旧通産省が論争しながらも時代に追いつこうとしてきたと言えなくもない。少なくとも、今の日本の通信規制や通信インフラが世界のどこと比べても、大きく劣るとは言いにくい。

 「統合的な政策実施」は、一見美しい。しかし、その陰に潜む「リスク」も十分に考慮に入れなければ、大競争時代の勝ち残りは容易ではないだろう。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト社長/COO,
スタンフォード日本センター理事
安延申

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。