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写真1●NTTドコモ サービス&ソリューション開発部長の栄藤稔氏
写真1●NTTドコモ サービス&ソリューション開発部長の栄藤稔氏

 2010年1月18日、Android普及を推進するコミュニティ「日本Androidの会」が開催した「日本Androidの会2010年1月のイベント」では、NTTドコモ サービス&ソリューション開発部長の栄藤稔氏(写真1、同社 先進技術研究所 主席研究員を兼務、大阪大学サイバーメディアセンター招聘教授)と、デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー八子知礼氏が講演し、クラウド・デバイスのビジネス課題を提示した。

 両講演に共通していたのは、「Android搭載スマートフォンなどのデバイスとクラウド上のサービス群、それに通信事業者のインフラの上で、どのようなビジネス・モデルやエコシステムが形成されるのだろうか」との問題意識である。これはAndroidアプリケーション開発者にとっても他人事ではない。「どのような形でアプリケーションのビジネスが成立するのか」という枠組み自体が、大きく揺れ動いているのが現状だからだ。

通信事業者の観点から「クラウド・デバイス」を語る

写真2●携帯電話は、クラウドと接続した「センサー・ハブ」である
写真2●スマートフォンは、クラウドと接続した「センサー・ハブ」である
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写真3●CPU性能は18カ月で2倍、バッテリー密度は12年で2倍と、進化のスピードが違う
写真3●CPU性能は18カ月で2倍、バッテリー密度は12年で2倍と、進化のスピードが違う
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 NTTドコモの栄藤稔氏の講演タイトルは「An Operator's View on Cloud Device Era (クラウドデバイス時代に対するオペレータの展望)」。通信事業者から見たスマートフォンなどクラウド・デバイスと、そのエコシステムに関しての考察を、研究者の目線から「所属企業ではなく個人の意見として」と断った上で語った。

 スマートフォンに代表されるクラウド・デバイスは、マイク、GPS、加速度センサーなど多くのセンサーから得た情報をクラウド上の情報システムに渡す「センサー・ハブ」としての側面がある(写真2)。これは、今までにないアプリケーションの可能性を示す。

 また、ユーザーに関する情報を蓄積するスマートフォンでは、「Context Aware」な(利用者がやりたいことを察知する)アプリケーションが求められている。例えば、NTTドコモのサービス「iコンシェル」では、「航空券を購入した」という購入履歴と、「空港の近くまで来た」という位置情報を組み合わせ、「空港の近くに来ています」というアラートを出してくれる。栄藤氏らの研究プロジェクトでは、キーワード抽出や位置情報などを組み合わせ、異なるアプリケーションを連携させる試みをしている。

 過去12年間の要素技術の発展トレンドを見ると、CPU速度は「ムーアの法則」にしたがい18カ月で2倍の高速化を続けているが、バッテリー密度は12年で2倍と進化の速度が異なることを示し(写真3)、「電池がネック」であることを指摘した。デバイスがいかに高速・大容量になったとしても、電池の容量がネックとなり、クラウド側で処理を負担する形が必然となるとの見解を示した。

次期通信インフラLTEでは、大容量配信やリアルタイムに対応可能

写真4●米AT&T Wirelsssでは、3年間でパケット通信料が約50倍に膨らんだ。カーブはiPhoneの伸びと重なる
写真4●米AT&T Wirelsssでは、3年間でパケット通信料が約50倍に膨らんだ。カーブはiPhoneの伸びと重なる
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 携帯電話ネットワーク・インフラについては、2010年にサービス開始が予定されているLTEをとりあげて説明。「通信速度だけでなく、回線を束ねたときの通信容量とレイテンシ(遅延)が重要」と強調した。LTE(long term evolution)は、現状のHSPA(high speed packet access)の3~4倍の通信速度が見込まれる。LTEネットワークの容量は、各家庭に雑誌やCDなどのコンテンツを配信するのに足りると指摘した。パケット遅延も5msと小さい。このようなネットワークを前提とすれば、リアルタイム性が問題となるアプリケーションの可能性が出てくる。LTEはヨーロッパ、米国、日本で普及が見込まれており、量産効果でチップセットの価格も下がることが期待できる。

 次に、人々のコミュニケーションのあり方の変遷について触れた。コミュニケーションのツールは、電話からEメール、そしてSNS(Twitter、Facebook、mixiなど)に移っている。そこで、クラウド・デバイスの上では、「人」の上の、個人にひも付いた情報を統合することが重要となってくる。

 通信事業者の観点という意味で興味深かったのは、米AT&T Wirelessのネットワークにおけるパケット通信の増加を示したグラフである(写真4)。2006年第2四半期から2009年第2四半期までの3年でパケット通信のトラフィックは約50倍の伸びを示しており、そのカーブはiPhone発売数と重なる。つまりスマートフォンの普及によりトラフィックは指数関数的な増加を示す。一方、スマートフォンの多くは定額制のパケット通信を利用するため、通信料収入は頭打ちの傾向を示す。

 これは通信事業者としては厳しい状況だが、それでも通信事業者のインフラ技術者たちは、より高速・大容量の「ダム・パイプ(いわゆる「土管」)」を支える決意をしている、と説明した。