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 本研究所では、クラウドコンピューティングについて、モバイルソリューションの観点から企業の情報システムを考えます。これまでは経営者やユーザーの観点から、クラウドコンピューティングの価値や本質、クラウド導入に積極的な企業の条件、あるいはモバイルソリューションやコラボレーションの大切さについて言及してきました。第8回は、それらを踏まえたうえで、企業IT部門のマインドセットに求められる変化を研究します。

クラウド導入を拒んでいるのはIT部門?

 2009年から、本連載で述べてきた内容を鵜呑みにするならば、「モバイルソリューションと同時にクラウド化への道を爆進せよ」と主張しているように聞こえているかもしれません。もちろん、すでに十分にお気づきのことと思いますが、それほど短絡的な話ではありません。クラウド導入によるコスト低減性、高い拡張性、リソース計画の柔軟性については理解できていても、現実問題として実行に移すには、それなりのハードルが存在しています。

 特に日本企業では、依然としてメインフレームやレガシーシステムが存在しています。標準化されず俗人的なままの業務プロセスや、システムインテグレータへの丸投げ構造、十分な現状把握・企画能力を持たないIT部門の存在などもあります。

 結果として日本の情報システムは、“スパゲッティ状”と揶揄されてきた状態をいまだに引きずっています(図1)。欧米のように、業務プロセスが整然と整理・統廃合されていたり、ERP(統合基幹業務システム)ソフトによってモジュール化されていたりという“理想像”からははほど遠い。これではクラウドコンピューティングへの移行どころの話でなく、アウトソースも進みません。

図1●企業情報システムがクラウドへ移行するのが困難な理由
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システム環境を冷静かつ客観的に見つめ直す

 そこに登場しているのが、ベンダー各社が提唱する「プライベートクラウド」です。ところが、IT部門の担当者によっては、「プライベートクラウドは、クラウド本来のマルチテナントの考え方が適用されていない」と指摘されたりします。そんな見方からプライベートクラウドに否定的になるよりも、まずは自社のシステム環境を冷静かつ客観的に見つめ直すことから始めてほしいところです。

 それにはまず、社内やグループ内のITリソースを整理・統廃合します。そして必要に応じて、外部ITリソースとマッシュアップあるいは外部協力者とコラボレーションできる領域を明確にする。各領域について、アウトソースの一手段として、クラウド化を検討していくのが本来の筋道でしょう。