PR

AT&TはM2Mプロバイダと連携強化

 AT&Tも2009年10月,M2Mサービス・プロバイダのヌメレックスとの提携関係を強化した。これまでヌメレックスに対してはネットワークを卸売りしていただけだったが,それに加えてAT&Tは,同社のコントロール・センターを使ったデバイス・マネージメント・サービス・プラットフォームをヌメレックスに提供した。ヌメレックスにとっては,ネットワーク設備やシステム管理サポートなどを全面的にAT&Tに委託する形となる。

 M2Mソリューションをサービス・プロバイダを通じて提供する理由としてAT&Tは,(1)同社には中小規模の市場に対応する十分なリソースがない,(2)特定市場やニッチ市場の対応はパートナ企業に任せる方が適切,(3)車両追跡などのM2Mソリューションには全米レベルのネットワーク・カバーが必要,(4)M2Mにはきめ細かいカスタマイズが必要でありパートナとの連携が不可欠──などを挙げている。

ベライゾンはクアルコムと合弁

 これら2社に対してベライゾン・ワイヤレスは,子会社を通じてM2Mを提供していく計画である。同社は2009年7月,M2Mソリューションを提供する米エヌフェーズを米クアルコムとの折半出資の合弁企業として設立した。

 主にカスタマイズされたM2Mソリューションを提供していたエヌフェーズの前身企業は,2006年にクアルコムに買収され,クアルコム・グローバル・スマート・サービシーズと改称していた。新生エヌフェーズは,既存ユーザーをベースに,ベライゾンの流通チャネルを補完することで,より広範なビジネス展開が可能になるとしている。

M2Mの垂直統合型モデルを狙う

 米国では2007年7月のFCC(米連邦通信委員会)による「無線インフラのオープン・アクセス・ルール」の採択以降,携帯電話各社がサードパーティ製端末・機器の認証機関を立ち上げ,自社のネットワークとの整合性を試験し,認証作業を進めてきた。結果的に既に多くのサードパーティ製品が認定され,市場に出回っている。一方,モバイル・ブロードバンドの進展により,今後はこうしたサードパーティ製品に対し,どのようなソリューションを提供し,どのようなビジネスモデルを作り出すのかが課題となっている。携帯各社は,これらのデバイスのデータ通信需要を安定的に取り込むために,早期にビジネスモデルを確立する必要がある。

 その際,ユーザーを囲い込むためには,特化した用途に対し,端末から通信回線,課金/プラットフォーム,アプリケーション/コンテンツまでを垂直統合的にサービス提供することが有効であることは,既にKindleの成功例で示された通りである。

 しかし一方でM2M市場は用途が多岐にわたり,個々の市場規模が小さいロングテール市場であり,携帯事業者が単独でビジネスモデルを構築することは難しい。このため,端末/ソリューション・ベンダーやサービス・プロバイダとの連携が必須となる。各社の最近の動きは,まさにロングテール市場であるM2Mで垂直統合型モデルを確立するためのエコシステムを作り上げようとする試みととらえることができる。

 このようなM2Mエコシステムでは,ユーザーとの接点は通信サービスと専用デバイスを提供するサービス提供事業者(MVNO)が持っているが,中核を担うのは課金システムやアプリケーション・プラットフォームを管理するM2Mサービス・プロバイダ(MVNE)だろう。スプリントの戦略は,自らがプロバイダとなってエコシステムの中心に位置しようとする動きであり,またAT&Tの戦略は,プロバイダのバックエンドとしての役割を強化する動きと見ることもできる。

武田 まゆみ(たけだ まゆみ)
情報通信総合研究所 研究員
情報系システムの設計・構築業務を経て,1992年より情報通信総合研究所。固定/無線のIPネットワークや携帯ネットワーク上のICTソリューションに関し,広く調査研究を行っている。著書は「情報通信アウトルック2007」(情報通信総合研究所編,共著)など。

  • この記事は情報通信総合研究所が発行するニュース・レター「InfoComモバイル通信ニューズレター」(旧InfoCom移動・パーソナル通信ニューズレター,2009年4月号より内容を一部刷新し名称変更)の記事を抜粋したものです。
  • InfoComモバイル通信ニューズレターの購読(有料)は情報通信総合研究所のWebページから申し込めます。
  • 情報通信総合研究所は,情報通信専門シンクタンクとして情報通信をめぐる諸問題について解決型の調査研究を中心に幅広く活動を展開しています。
  • InfoComモバイル通信ニューズレターは,1989年の創刊。海外の移動体通信に関する様々な情報を月1回継続的に提供しています。世界各国の携帯電話事業者の概要や加入数などのデータをまとめた「InfoComモバイル通信ワールド・データブック」(年2回発行)とともに,総合的な情報提供サービス「InfoComモバイル通信T&S」として提供しています。