PR

 今回のテーマは、営業に対する誤解を解くことです。まずは、山田さんの様子を見ていきましょう。

図

 システムエンジニアの山田ひろしです。お客様との契約が切れて、1カ月が経ちました。営業の五十嵐さんは「次の仕事はすぐ見つける」と言っていましたが、僕のようにスキルの乏しい新人をお客様に引きとっていただくことは今の状況では難しいようです。

 今日は全体定例会の日です。僕のように仕事がない人が最近では増えてきていて、今ではエンジニアの10%近くの人が待機している状態です。同じような境遇の人たちと話をすると、最近では「転職」の2文字を本当によく聞きます。でも、3年目の社員が転職できる先なんて、本当に限られているし、今は不況でどこも同じような状態だと考えると、やっぱり転職はためらってしまいます。

 最初は営業部長の話です。売り上げが前年対比で15%ダウンしているという話を聞きました。営業の施策を強化しているとのことですが、「自分には関係ないな」と不謹慎ながら思ってしまいました。

 正直なところ、営業部が何をやっているかも、よく知らないのです。営業担当者というと、五十嵐さんのように口が達者で、何にでも「大丈夫、大丈夫」とお気楽な印象があります。社員旅行で営業担当者と一緒の部屋になった時に、夜中まで飲みに付き合わされたことを思い出しました。彼らは、毎日そんなふうにお客さんと飲んでいるんでしょうか?

 いろいろと考えているうちに、1時間ほどの定例会が終わりました。比留間課長が何か言っています。「それでは、解散します。お疲れ様でした。名前を呼ばれた人は残ってください。伊藤さん、加藤さん、佐藤さん、山田さん」。

 集まった顔ぶれを見ると、全員、仕事がなくて待機している若手のエンジニアです。嫌な予感がします。なぜか五十嵐さんも比留間課長の隣にいます。比留間課長が話し始めました。

 「君たちは、来月から営業部に配属される。会社の業績が極めて厳しく、よく考えた上での決定だ。これから営業活動について、五十嵐さんから説明がある。質問がある人は説明の後に時間を設けてあるので、そこでするように」。

 「ちょ、ちょっと待ってください、僕らの希望は一切なしですか?」と誰かが言いました。比留間課長が答えます。「残念ながら、今回は希望を聞くことは出来ない。今のまま行けば、今期は赤字必至だ。そうなれば、リストラを始めなければならない。職を失うか、営業で頑張るか、どちらを選ぶかだ。君たちはまだ若い、営業のいろはを学べば、今からでも十分活躍できる」。

 急展開に頭がくらくらします。「営業なんか、本当に出来るのか?」「自分のやりたいことじゃない!」「とても五十嵐さんのようにはなれない」など、様々な考えが浮かんできます。しかし、会社は営業をやることを要求しています。

 五十嵐さんが話を始めました。「みんな、大丈夫。私の言うとおりやれば、営業はできるようになる。自分も昔はエンジニアだった。営業にも楽しいことはありますよ」。果たして、本当なのでしょうか?

 主人公の山田さんは営業に異動することを命じられました。営業には「辛い仕事で、もともと才能のある人にしか出来ない仕事だ」というイメージがあるかもしれません。その背景に、営業という仕事が物の押し売りであるという認識があるのではないかと思います。「いつも数字に追われている」「本当に顧客が必要としているかどうかなんて構わない」「今期予算の達成のために、必要もない商品・サービスを無理やり購入させる」「顧客からもエンジニアからも疎まれる」といった認識です。

 それは誤った認識です。システム会社において、営業は面白い仕事の一つです。システム開発を考えている顧客は、多くの場合何らかの問題を抱えていたり、何か達成したい課題をシステムによって解決したいと考えていたりします。その顧客と同じ立場に立って一緒に問題を解決していこうという仕事、それが営業なのです。顧客の夢に共感し、自社の商品・サービスを通じてその実現を支援していく。自分の仕事が役に立っているという実感を得られるのです。

 また、営業を経験することでキャリアの幅が広がります。なぜなら営業は顧客と直接会って話す仕事です。それを通じて、顧客が何を望んでいるか、どういうことに困っているか、顧客の気持ちを理解できる立場にいます。そのため、営業力は汎用性のあるスキルなのです。エンジニアのいない会社はありますが、営業担当者のいない企業はありません。営業の本質は普遍的なため、たとえ扱う商品が変わったとしても、基本的な知識を身に付けるだけで臨機応変に対応することができます。