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 NTTドコモやKDDIに対して,ソフトバンクは,異なるアプローチを取る。上位サービスの提供事業者として振る舞い,他国の様々なインターネット・サービス提供事業者への出資を通じて事業領域の拡大を狙う(表1)。Yahoo! BBでユーザー数を一気に拡大し,その上にVoIPや映像サービスなどを追加提供していった日本と同じようなモデルを現地企業に適用する戦略だ。

表1●ソフトバンクの主な海外M&A事例
出資先 JIL(ジョイント・イノベーション・ラボ) オーク・パシフィック・インタラクティブ(OPI) ロック・ユー
国・地域 オランダ 中国 米国
業種 携帯電話向けプラットフォーム開発事業 SNS事業者 SNS向けアプリケーション開発
売上高 ―― 非開示 非開示
出資額(注1) 非開示 153億円 約63億円
出資比率(注2) 25% 19.2% 非開示
株式取得時期(注3) 2008年5月 2008年4月 2009年11月
注1)OPIの出資額は2009年7月末時点の累積。ロック・ユーの出資額は2009年11月末までの累積。米ドルは90円で換算
注2)出資比率は株式取得時点のもの。ただしOPIは2009年7月末時点。OPIに関しては買い増し中であり,夏ころまでに35%前後にする計画
注3)OPIは株式取得を明らかにした時期
SNS : social networking service

 同社が集中的に投資しているのは,中国のSNSと電子商取引(EC)サービス事業者。「起業したばかりでキャッシュフローが潤沢でなくても,優秀な経営陣がユーザー数の拡大に努めている企業は有望と判断している」(ソフトバンクの後藤芳光財務部長)。

 出資比率を40%以下に抑えて現地の経営判断を尊重する姿勢を見せながらも,国内事業のノウハウを積極的に提供して相乗効果を上げることを狙う。例えば2000年1月に出資し,その後大きく成長した企業間取引サイト運営のアリババには,一般消費者向けオークション・サイト「タオバオ」の開設を促した。

世界規模のアプリ・マーケットを狙う

 一方,携帯電話分野では携帯電話向けプラットフォームを開発するJILを海外の事業者とともに2008年5月に結成した。合計約10億のユーザーに対して共通のアプリケーション実行基盤を提供し,世界規模のアプリ配信マーケットを作り上げるのが狙いだ(写真1)。サービス・ポータルや課金システムをどの事業者が提供するのかなど,JILにはまだ明らかになっていない点が多い。ただし,データARPUのこれからの上昇を狙う戦略であることは間違いない。

写真1●2008年3月期の決算説明会でJILの意義を説明するソフトバンクの孫正義社長
写真1●2008年3月期の決算説明会でJILの意義を説明するソフトバンクの孫正義社長
JILとは
Joint Innovation Labの略。携帯電話端末を利用する新しいテクノロジやアプリケーション・サービスの開発を目的に,ソフトバンクと中国移動,英ボーダフォンの合弁会社として2008年8月に設立された。その後,2009年4月には米ベライゾン・ワイヤレスが加わっている。活動内容は,(1)ウィジェットが携帯電話機で稼働するためのミドルウエアの開発(共通規格の策定),(2)外部のソフトウエア開発会社がウィジェットを開発するために使うSDK(software development kit)の開発,(3)ソフトウエア開発会社が開発したウィジェットを登録するシステムの開発,(4)登録されたウィジェットをユーザーが購入する際の認証機能や課金機能を持つシステムの開発──である。