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 月刊ビジネス誌『日経情報ストラテジー』と東京コンサルティングが共同で事務局を務める「オールジャパン競争力強化実行委員会」は、情報システムユーザー企業のCIO(最高情報責任者)が、情報システム提供企業に対して抱く疑問を「CIO公開質問状」として質問した。クラウドサービスを提供するIT(情報技術)ベンダー主要8社が公開質問状に回答した。本記事では、日本IBMでクラウド事業を統括する三崎文敬クラウド・コンピューティング事業クラウド事業企画部長による回答を掲載する。

質問1:「クラウド」の定義

Q:貴社における、対外的に公表している「クラウド」「クラウド・コンピューティング」の定義について確認したい。

A:「自動化・標準化」によって実現するITサービス提供の工業化。

 「クラウド」とは、一般消費者向けのインターネットサービスに影響を受けた、消費とデリバリー(提供)の新しいモデルだ。要素技術としては、仮想化・自動化・標準化によって実現する。IBMの考え方は、米NIST(国立標準技術研究所)が策定を進めているクラウド・コンピューティングの定義にかなり近い。

 IBMはこの3つのうち、仮想化よりも「自動化・標準化」という点を強調している。逆に言えば、これまでコンピュータを使ったIT(情報技術)サービスのデリバリーは、ほかの工業製品などの提供と比べて、あまりにも自動化・標準化が進んでいなかった。クラウドは「ITサービスデリバリーの工業化」だと位置づけており、そこを追求するからこそ価値が出せると考える。

質問2:他社に比べた優位点

Q:貴社が提供するクラウド関連サービスで、他社に比べて優れているのはどんな点か

A:過去40年来アウトソース受託で培った経験。

 クラウドにはいくつかの種類がある。「プライベート・クラウド」「パブリック・クラウド」、これらを組み合わせた「ハイブリッド・クラウド」がある。

 IBMの強みは、顧客企業の業務に応じて、プライベート、パブリック、ハイブリッドのすべてのパターンに対応できることだ。IBMは全世界で多くのアウトソーシング案件を受託している。この豊富な経験から、稼働率・ピーク性などの特性を見て、どういう業務・アプリケーションソフトでクラウドが効果を発揮しやすいかという「スイートスポット」を熟知している。IBMが過去40年来、メーンフレームで培った仮想化・自動化・標準化の技術的蓄積も、優位点だと考えている。

 クラウドはすべての局面でコスト削減や効率化のために有効だとは限らない。例えば、ほかのクラウド関連サービス提供企業の中には、パブリック・クラウドしか提供していないところがある。一般には、パブリック・クラウドは安いだろうというイメージがあるかも知れない。しかし、例えば米Google(グーグル)のメールサービス「Gmail(ジーメール)」はユーザー数と利用期間に比例した課金体系になっている。当然、ある一定の損益分岐点を超えると、従来のコストよりも割高になる。こうした点も念頭に置かなければ、クラウドは効果を発揮できない。

 企業内には既存情報システムが存在して、一定のエコシステム(生態系)がある。それとの連携も考えないといけない。(パブリック・クラウド一辺倒ではなく)プライベート・クラウドの採用を検討したほうが、サービスの標準化を進めやすいケースだってあり得る。

 IBMとしては、きちんと技術のロードマップを示して、市場を育てることを重視している。「スイートスポット」に留意すれば、クラウドは今後大きな付加価値を生む可能性がある。そうなる前に(ユーザー企業の経営陣の間で)過度な期待が広がって、それが急に冷めてしまうようなことになれば、コンピュータ業界は自分たちで市場をつぶしてしまうことになると思う。

次回に続く


回答企業8社一覧


回答者:三崎文敬(みさき ふみたか)氏
日本IBM クラウド・コンピューティング事業クラウド事業企画部長

日本IBM入社後、製品開発担当や製品企画担当などを経て、米IBMコーポレーションの技術戦略部門スタッフ。2001年以降、Linux、グリッドなど新興ビジネス育成に従事し、2009年より未来価値創造事業にて全社のクラウド戦略を担当。2010年1月から、クラウド・コンピューティング事業クラウド事業企画部長として全社のクラウド・コンピューティング事業戦略およびマーケティングを担当。

オールジャパン競争力強化実行委員会とは

 情報システムの有力ユーザー企業18社のCIO(最高情報責任者)およびCIO経験者で構成する組織。IT(情報技術)ベンダーに対して、CIOの率直な疑問を「CIO公開質問状」として発信する活動を展開。CIO側の疑問の理解と、ITベンダー側の改善努力を促し、IT活用を通じた日本企業の国際競争力向上につなげることを目指す。

 事務局は、月刊ビジネス誌『日経情報ストラテジー』編集部と、東京コンサルティング代表の石堂一成氏が共同で務める。それぞれ、CIOが参画する中立的な勉強会である「日経情報ストラテジー CIO倶楽部」と「CIOネットワーク・ジャパン」を主宰している。この2つのコミュニティーに所属するCIOを中心とする18社で委員会を構成する。

メンバー企業名(50音順):
旭化成、オムロン、オリックス、カシオ計算機、サントリーホールディングス、JFEスチール、新日本石油、住友電気工業、セブン&アイ・ホールディングス、損害保険ジャパン、電通、東京ガス、東芝、トヨタ自動車、パナソニック、富士ゼロックス、三菱ケミカルホールディングス、森永乳業