固定伝送インフラ
局舎と伝送路のスリム化が急務
KDDIのサービスを移動系と固定系を分けた場合,固定系の収支は苦しい状態だ。その最大の理由のひとつが,合併を繰り返してきたことによる設備の重複である。伝送路の複線化,局舎の分散化は,ネットワークの信頼性向上という観点からすると,必ずしも悪いことではない。しかし,同社の場合,重複が行き過ぎている面があり,それが固定費の増大につながってきた。そこで同社は,2009年10月の決算発表の場で,重複している設備を整理・統合する「NWスリム化」という方針を打ち出した。
例えば,コアに近いところでは,旧KDDと旧日本高速通信(テレウェイ)の光ファイバが重複しているケースもある。また,東京近郊のアクセスでは,KDDI,旧パワードコム,東京電力から事業譲渡を受けたFTTHの三つのネットワークがある。それぞれ収容局の配置や光ファイバの延長方法で考え方が異なるため,重複する部分がある。「それらを一つの地図に重ねてみると,近い場所に同じような小さな局舎があることが分かってきた。そういう状況を図面であぶり出していくことで,多くは整理・統合できるはず」(同社の渡辺氏)。
同社は,コア・ネットワークについては具体的な目標を設定している。2009年時点で約250局の局舎,約2万6000kmの伝送路を,2016年3月期には約140局,約2万2000 kmまでに減らす方針だ(図1)。
ただ,より難しいのが,アクセスや,アクセスを集約する「メトロ」の部分である。ノードの数で見てもコアに比べて,アクセスとメトロは1けたも2けたも大きく,資産も膨大になるという。その半面,整理・統合によって減らせる局舎や伝送路が多くなり,効果も大きい。メトロやアクセスでNWスリム化がうまくいけば,大きな収益改善に結び付く可能性がある。