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 月刊ビジネス誌『日経情報ストラテジー』と東京コンサルティングが共同で事務局を務める「オールジャパン競争力強化実行委員会」は、情報システムユーザー企業のCIO(最高情報責任者)が、情報システム提供企業に対して抱く疑問を「CIO公開質問状」として質問した。クラウドサービスを提供するIT(情報技術)ベンダー主要8社が公開質問状に回答した。本記事では、NECの藤吉幸博代表取締役執行役員副社長が、「クラウド」に関する疑問に回答する。

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質問3:情報保護・保証の考え方

Q:顧客企業のデータの保護・セキュリティーをどのように確保しているか。万が一の事故の場合の保証についてどう考えているか。

A:99.9%を上回る稼働率を実現するために、基幹系情報システム構築で培ったノウハウを注入する。

 我々は企業向けシステムを作っている。これから企業の基幹系システムをクラウドに載せた場合、現時点でよくあるクラウドサービスの形ではないものが必要だろう。品質もよく「稼働率99.9%」が目安とされるが、現実には99.9%ではなかなか(企業向け情報システムでの実用化は)難しくて、例えば99.9999%にする技術も必要になってくる。99.9999%のレベルまでもっていくシステム構築技術を我々は持っている。それをクラウドサービスの中に取り入れつつある。

 質問2に対する回答で説明したNECの財務会計システムでは、現実に、データセンターがあって、バックアップ用のセンターがあってという形で、稼働率を高めて運用している。

 事故があった場合の保証は、SLA(サービス・レベル・アグリーメント)の契約の中で決める形になる。当然、保証のレベルが価格に反映される。クラウドサービスで複数の顧客企業が同一システムを共有する形をとる場合は、顧客企業が増えるにつれてリスクも増すと認識している。損害補償のための保険金として事前にいくら頂くとか、そこについては詰め切れてはいない。

 ただし、トラブル時の保証自体が大きな問題になるようなシステムだったら、サービス化はなかなか難しい。1回トラブルが発生しただけで数日間止まってしまうようなクラウドサービスでは、基幹系のシステムとしては使い物にならない。そう考えてビジネスを推進している。

質問4:標準化・オープン性確保の考え方

Q:クラウド業界の標準化・オープン性確保についてどのように考えているか。

A:標準化は必須。政府や国際機関などの取り組みに積極的に関与したい。

 企業向けの情報システムでは、既存の情報システムとつないでいくことが必要だ。クラウドサービスも1つで成り立つわけではなく、サービス間の連携を取らないといけない。つなぎの部分は標準化が必要だと認識している。

 (米IBMなどが参加するクラウドの相互運用性確保を目指した)「オープンクラウド・マニフェスト(The Open Cloud Manifesto)」(関連記事)は、当たり前のことが書かれている文書だ。NECはこれに対して異議があるわけではなく、当社もここに書いてあるようなことをやらなければいけないと思う。実際に参加するかどうかは、状況を見ながら考えていく。

 それ以外でも、日本国政府や様々な団体が主体となって様々な標準化検討の動きがある。そういうところにも積極的に参画したい。どこかだけでやるというわけではなく、並行して進めていく必要があると思っている。今さら国内企業だけで協調ということはあり得ないと思う半面、国内のITベンダーさんとある程度連携しないと(海外勢が)向こうからパーッと来て、市場を取られるのは個人的にはしゃくに障るとも思う(笑)。

質問5:ユーザー企業に伝えたいこと

Q:ユーザー企業に伝えたいことは。

A:基幹系でもサービス水準を維持しつつコストを下げられる。

 基幹系でクラウドは難しいと考えないでほしい。ユーザー企業と話したり引き合いの状況を見たりしていると、大手ユーザー企業は「クラウドは難しいな」ではなく、「そういう方向に世の中が動いていくだろう」という雰囲気になっていると感じる。まだ情報開示できないが、基幹系におけるクラウド活用のプロジェクトもいくつか進行している。

 質問2に対する回答で、NECは基幹系システムで強みがあると話した。この点は再度強調したい。NECは既存の基幹系システムのサービスレベルやセキュリティーは維持しつつ、コストは2~3割下げるという提案をしている。これは難しいことではなく、実現性が見えていることだ。

 競合他社でもクラウド上で基幹系システムを構築することを強調し始めているところがある。今後は実力勝負になってくるので、実績を積み重ねていきたい。


回答企業8社一覧


回答者:藤吉幸博(ふじよし ゆきひろ)氏
NEC 代表取締役 執行役員副社長
1972年NEC入社。2004年MCシステム事業本部長。2005年執行役員兼MCシステム事業本部長。2006年執行役員兼OMCS事業本部長。2008年執行役員常務。2009年取締役執行役員常務に就任し、2010年4月から代表取締役執行役員副社長。

オールジャパン競争力強化実行委員会とは

 情報システムの有力ユーザー企業18社のCIO(最高情報責任者)およびCIO経験者で構成する組織。IT(情報技術)ベンダーに対して、CIOの率直な疑問を「CIO公開質問状」として発信する活動を展開。CIO側の疑問の理解と、ITベンダー側の改善努力を促し、IT活用を通じた日本企業の国際競争力向上につなげることを目指す。

 事務局は、月刊ビジネス誌『日経情報ストラテジー』編集部と、東京コンサルティング代表の石堂一成氏が共同で務める。それぞれ、CIOが参画する中立的な勉強会である「日経情報ストラテジー CIO倶楽部」と「CIOネットワーク・ジャパン」を主宰している。この2つのコミュニティーに所属するCIOを中心とする18社で委員会を構成する。

メンバー企業名(50音順):
旭化成、オムロン、オリックス、カシオ計算機、サントリーホールディングス、JFEスチール、新日本石油、住友電気工業、セブン&アイ・ホールディングス、損害保険ジャパン、電通、東京ガス、東芝、トヨタ自動車、パナソニック、富士ゼロックス、三菱ケミカルホールディングス、森永乳業