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桃井 智徳/デロイト トーマツ コンサルティング TMTグループ マネジャー

前回は,今後の日本の海外展開ではデータ通信領域でアジアをはじめとする世界の成長市場の需要を喚起するソリューション展開が鍵となることを述べた。今回はその一例として,近年急速に存在感を増しつつある映像コンテンツの流通プラットフォームを巡る動向に目を向ける。

(日経コミュニケーション編集部)

 若年層をはじめとした視聴者のテレビ離れがメディア事業者の間で盛んに議論された2005年ころ,これに呼応するかのようにインターネットなどの通信網を使った映像コンテンツの流通が立ち上がった。まずは「YouTube」などの視聴者投稿型サービスが急速に立ち上がり,続いて「BBC iPlayer」といったテレビ放送の補完型サービスがじわじわと視聴者を増やした(表1)。

表1●海外の代表的なパソコン向け映像配信サービス
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表1●海外の代表的なパソコン向け映像配信サービス

 今やパソコンで映像コンテンツを楽しむ習慣は,デジタル・ネイティブと呼ばれる若い世代に広く根付きつつある(図1)。特に米国メディア大手3社が出資する「Hulu」は順調に視聴者を伸ばし,月間800万人(2009年8月)を超えるユーザーを獲得しているという。テレビを強く意識したシンプルで分かりやすいインタフェースと厳選されたプレミアム・コンテンツを,45分に3~4回,各15秒程度の広告とともに無料で提供するなど,広告型のビジネスモデルに最適化した戦略の成果と言われている。

図1●世代別の映像コンテンツへの接触動向(VODとテレビ)
図1●世代別の映像コンテンツへの接触動向(VODとテレビ)
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広告依存のビジネスモデルの限界

 ただしこれらのサービスも,ビジネスとしては順調とは言い難い。サービスの多くは無料で,収益源は広告である。収益基盤としては不安定であるうえに広告単価も必ずしも高いとは言えず,人気が出るほどに配信コストがかさむ。こうした構造が,単独ビジネスとしての成立を難しくしている。

 すべてのサービスの収益情報が公開されているわけではないが,これまで筆者がヒアリングを実施した範囲では広告モデルに立脚した事業単体で安定した収益を上げている映像配信サービス事業者は皆無だった。優良スポンサーを獲得し,徹底した内製化で効率運営をしているHuluでもようやく黒字化が見えるかどうかのレベルである。