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 トップ対談の後半では、ITサービス会社に「企画提案力」が求められていることについて、熱い議論が繰り広げられた。これは長年の課題であるが、手付かずだった、と両氏は警鐘を鳴らす。高度IT人材を育成するには、ITサービス産業だけでなく、国の力も必要だと力説する。

(モデレーターはキャスターの福島敦子氏、文中敬称略)


モデレーター ITの投資対効果についてお聞きします。日本とアメリカでは、IT投資の効果に大きな違いがある、とのことでした。日本は業務の効率化のためにITを使うことが多い一方、アメリカはITによってビジネスモデルをがらりと変えて、大きな価値を生んできたということのようです。ITサービス会社が、企業の競争力の向上に貢献するには、このあたりに課題やヒントがありそうです。

藤沼 JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の調査によると、ITサービス会社の一番の課題は「企画提案力」です。企画提案力については、以前からずっと指摘されてきたことです。作るのはいいけれど、もう少し、その手前のことも考えてほしい、と言われているわけです。

野村総合研究所 藤沼彰久会長兼社長
野村総合研究所 藤沼彰久会長兼社長
(写真:吉田 明弘)

 こうした注文が増えているのは、情報化で効果を出すことが以前よりも難しくなってきたからです。情報化で効果を生み出すためには、業務改革も必要です。業務改革せずに、情報化をいくらやったところで効果は出ません。

 「情報化せずに業務改革だけに力を入れる」と「情報化だけに力を入れて業務改革には手を抜く」の効果を比べたら、前者の方が企業にとっての効果が大きいという調査結果もあります。

 こうしたことを知っているので、ITサービス会社の人間も一生懸命やっています。ところが、顧客からは「料金が高い」と言われることが多く、まだまだ評価されていない、というのが実情です。

「このサービスは“タダ”でしょう」になってしまう

山下 ITサービス会社とお客様との関係については、役割分担や契約の方法を見直す必要があると思います。「何時間作業したか」「何人が作業に参加したのか」ということだけでサービスの料金を決めるのではなく、提供したサービスの内容で評価してほしい、と思います。「どのようなアウトプットを出したのか」「どのような改善提案だったのか」ということです。

 アメリカ政府の(システム関連の)契約のなかには、パフォーマンスの程度に応じて料金を支払う成果報酬型の契約形態があります。成果報酬型の契約を結ぶことについては、我々自身が顧客に提案し、お客様に理解してもらわなければなりません。

 ただし、日本のサービスはタダになりがちです。当社のようなシステム構築屋が、業務改善や改革のアイデアを出しても、顧客からは「そこはタダでしょう。“サービス”ですよね」と言われてしまいます。外資系コンサルティング会社であれば、対価をいただいている部分であるにもかかわらずです。

 我々はシステム構築サービスについては、生産性をより高めることで、対価をいただきます。これだけでなく、業務改善や改革の提案力を磨いていきます。お客様にはここの部分をぜひ見ていただき、価値があるものを提示できたら評価していただきたいのです。

藤沼 現場の業務の効率化だけでなく、ビジネスモデルの変革を担う。これが我々の使命であり、ここで対価をいただけるようにしなければならないのです。

 システムで効果を生み出すという場合、使っている人間の頭の構造を変える必要もあります。使いこなしていくかどうかで、IT投資の効果というのは大きく違ってきますからね。

新しい仕組みを提案することを期待されている

NTTデータ 山下徹社長
NTTデータ 山下徹社長

山下 当社はお客様満足度調査を通じて、我々に対して何を期待しているのかを3年前から聞いています。それによると、ITの全般について、使い方も含めて相談にのる「ITパートナー」や、新しいビジネスモデル・仕組みを作るための相談相手になる「事業パートナー」として期待する顧客が増えていることが分かりました。

 システムを構築するのに必要なものを持ってくる「システムベンダー」や、システムを構築する「システムインテグレーター」といった仕事は大切です。でも、これらだけを手堅くやっているだけでは、不十分ということです。

 ITサービス企業が提案型になるためには、IT人材の育成に関しても業界全体で取り組むべきだと思います。例えば、専門性の確立は大事なことでしょう。

 ソフト会社であっても、受託開発型ではなくて、「あの会社のあのエンジニアのスキルがほしい」と言われるようになるのが理想です。建築業界の設計事務所のような存在です。土木建築では、ゼネコンと同様、設計事務所が重要な役割を果たしています。

 ITサービス業界についても、会社の規模が大きい・小さいということではなく、持っているスキルで評価されるようになる、という環境を整えていくべきです。このためには、ITサービス産業に、高度な国家資格を作る必要があるのではないか、と思います。

 今、ITは人命にかかわるところにまで関与するようになっています。ITサービスは、大変なリスクを背負っているビジネスになってきましたから、国家的なレベルの資格制度があっても、おかしくないと思います。反対する方もいらっしゃいますがね。