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 情報システムの“ユーザー企業”にとって、情報システムをどう活用すれば競争力を強化できるのか。ITベンダーやシステム・インテグレーターなどの営業トークや提案内容を見極めるうえで何に留意するべきか。ITベンダーなどに何かを求める以前に、“ユーザー企業”が最低限考えなればいけないことは何か――。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務めて急成長を支え、『ダメな“システム屋”にだまされるな!』(日経情報ストラテジー編)の著者でもある佐藤治夫氏が、情報システムの“ユーザー企業”の経営者・担当者の視点から、効果的な情報化のための発想法を解説する。

 前回(第16回)の続きです。急成長中のある“ユーザー企業”は、若手社員数人のチームを組み、「予算1億円」「納期半年」で成長を支えるための新システムを構築してくれるIT(情報技術)ベンダーを探していました。ある大手ITベンダーの提案は急成長の要因を的確にとらえた内容でしたが、予算・納期に難色を示し、提案を受ける側でありながら「1億円・半年という根拠の無い“精神論”に付き合うつもりはない」と叱(しか)られてしまいました。

 困り果てた若手社員たちは、事業部長に判断を委ねることにしました。成長企業だけに、この事業部長は即断即決しました。彼はITベンダーの提案者に向かって 「あなたが決めて欲しい。このシステム開発にいくらかけるべきか、どれだけの時間を投入すべきか」と要請しました。

 案件が進み始めた数日後、この成長企業は、大手ITベンダーに所属していたその提案者を「情報化推進者」に指名しました。CIO(最高情報責任者)という肩書きは付きませんでしたが、それに近いものだったかもしれません。事業部長から経営トップに話が伝わり、トップが提案者に会ったその場でやはり即断即決したのです。直後にトップが出した指示は「今後、当社の情報化はすべて彼の言う通りにしよう。予算も彼の言い値にしよう」というものでした。その後、この企業は成長要因を踏まえた情報化を推進し、数年後に業界トップ企業になりました。

 この経過にはもう1つの側面があります。この大手ITベンダーに所属していた提案者が会社に戻り、上司に「この企業は勢いがあって面白い」と報告したところ、彼の上司に当たる3人の役員は、そろって否定的な反応を示したのです。当時は業界トップ10に入るかどうかで事業規模が小さかったことや、ベンチャー企業としてゼロからスタートして成り上がったことなどが気になったようです。