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 電話機やUC(ユニファイドコミュニケーション)を利用した、ちょっとしたTipsやライフハックを紹介していく「能地・UCライフハック研究所」。今回は、最近再び注目を集めている在宅勤務について考えてみます。日本ではなぜか、在宅勤務は特別視されているようです。まずは、その実行が難しいとされる理由は本当なのかを確認してみましょう。

 2010年に入り、新聞各紙が「在宅勤務」を記事として取り上げ出しています。論点は様々ですが、「会社で物理的に働けない事情を持った人が在宅勤務という形態で働けるようになった」という趣旨が多いようです。それも在宅勤務を選択する理由の一つであることは間違いありません。しかし、その点のみがクローズアップされ過ぎているようにも感じます。

10年前から、ほとんど人がいなかった米国のオフィス

 10年前、当時勤めていた会社の米国本社(HQ)を訪ねた際に、愕然としたことがありました。オフィスに、ほとんど人がいないのです。予定されていた会議が終わり、プロダクトマネジャーたちに「Say Hello」を言おうと、彼らがいるフロアーに行ったところ、全員不在。仕方なく、その日はあきらめてホテルに帰りました。

 次の日も、同じようにフロアーに行ってみましたが、やはりほとんど人がいません。ぐるぐる歩きまわった後に、一人だけ仕事をしている人を発見できました。日本のビジネス状況や新製品のリリースについて軽く話した後、「ところで他のみんなは外出しているの?」と素朴な疑問を投げかけてみました。

 すると、「○○と××は、たいてい自宅で仕事している。△△は朝早く来て、午後3時には帰っちゃうよ。僕はたまたま定例会議があったから出社しているけどね」という答え。メールベースでやり取りしていても分からなかった米国本社の勤務形態は、一種カルチャーショックでした。

 日本人の感覚では「そんなのが許されるの?」でしょう。しかし彼は、「会社に来ようとすると、酷い渋滞ですごく時間がかかる。通勤時間がもったいない。家で仕事ができるなら、そのほうが効率的。△△が早く帰るのも、渋滞に巻き込まれないためだよ」と、何を疑うことなく答えてくれました。

車で45分の通勤時間がもったいない

 たしかに当時は、インターネットバブルで、サンフランシスコからシリコンバレーに伸びる101ハイウエイの渋滞は酷い状況でした。そのため従業員それぞれが自衛措置を取っていたというわけです。ちなみに、後で分かったことですが、彼が言う「すごく時間がかかる」は、車で45分程度でした。満員電車で60分といった日本のサラリーマン感覚とは全く違います。

 オフィスが点在している米国では、電話会議も普通に行われています。オフィスに出社しても、会議室や個室で一人電話に向き合って打ち合わせをしていることもしばしばです。そうした環境では、オフィスにいようが自宅にいようが、電話で話せれば普通に打ち合わせができます。仕事をする場所の制約があまりないのです。これも家で仕事をできるようにしている理由の一つでしょう。

 筆者は米国出張のたびに、満員電車で通勤しない済む車通勤に憧れていました。しかし、この時からは、在宅勤務にも憧れるようになったのです。

 あれから10年がたち、筆者も在宅勤務が許可されている会社に勤務しています。実際、週に2、3日は在宅勤務です。それだけに、最近の日本における在宅勤務に関する種々の記事を読むと、若干の違和感を感ぜざるを得ません。在宅勤務はまるで、何か特別な事情をもった人を救済するための働き方だととらえられているからです。

 多くの場合、在宅勤務は「ワークライフ・バランス」と共にも語られます。内閣府は、ワークライフ・バランスを、「労働者が仕事一辺倒ではなく、それ以外の生活とうまくバランスがとれるようにすること」と定義しています。経済的な自立、仕事上の心労、子育てや介護など、仕事と生活の間で問題を抱える人を解決するための取り組みというわけです。

 筆者は、政府やそれに呼応した企業の取り組みを否定するものではありません。しかし、在宅勤務はワークライフ・バランスを実現させるための一つの方法でしかありません。在宅勤務により通勤時間がなくなったからといって、必ずしもワークライフ・バランスが実現するというものではないのです。

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