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 衛星放送協会は東経110度CS放送に関して、「SDTV放送による高画質化も視野に入れてほしい」とする趣旨の意見を総務省に伝えた。「東経110度CS放送の高画質化は、ハイビジョン放送を前提としなくても実現できるのではないか」という考えからである。

 東経110度CSのハイビジョン放送は2010年2月26日時点で7チャンネルと、同放送のチャンネル全体の1割程度にとどまっている。この理由は、東経110度CS放送の周波数が逼迫(ひっぱく)しており、既存のSDTV放送をハイビジョン化したり、新たにハイビジョン放送のチャンネルを割り当てたりするための帯域が確保できないためだ。2011年には次期BSデジタル放送の開始に伴い、東経110度CS放送の一部のチャンネル終了により空き帯域が発生するが、その帯域幅は合計44スロット分にとどまる。「この帯域幅では2チャンネル程度のハイビジョン放送しか提供できない」(衛星放送の関係者)という。

 こうした状況の中で、「放送するジャンルの特性に合わせて、可能な範囲でSDTV放送による高画質化を図る」という考えが番組供給事業者の間で浮上してきた。の帯域幅を広げれば、SDTV放送のままでも画質を従来よりも向上できる。そこで衛放協は2010年1月に、SDTV放送による高画質化に向けて、画質評価実験を行った。会場には、多くの番組供給事業者が足を運んだ。

 この実験は、映像信号を異なる帯域幅で伝送すると、画質にどの程度の差が出るかを確認するために実施された。映画やスポーツなど異なるジャンルの映像を、それぞれの帯域幅で想定される速度で符号化し、「480p」(有効画素数480×720の順次走査)方式の映像信号にして、それを復号した後に再生した。この実験については衛星放送の関係者から、「8スロット程度の帯域で十分と感じた」「スポーツ番組やショッピング番組はドラマなどよりも広い帯域が必要になる」といった声が上がっている。衛星放送の関係者は今回の実験を通じて、SDTVでどの程度の高画質化を実現できるかを実感した。

 空き帯域を利用して東経110度CS放送のチャンネルの高画質化を行う場合、改めて委託放送業務の認定申請が必要になる。東経110度CS放送の委託放送業務認定の比較審査基準には、「1週間当たりの放送時間全体における高精細度テレビジョン放送(ハイビジョンカメラなどにより制作・編集された番組を放送するものに限る)にかかる放送時間の占める割合が高いこと」が項目の一つになっており、SDTV放送の委託放送業務の優先順位は低い。2009年2月から同年3月にかけて、東経110度CS放送の周波数の空き帯域(24スロット分)の認定申請受け付けが行われた。このときに認定を受けたのは、ハイビジョン放送の開始を希望したキッズステーションだった。現在の東経110度CS放送の審査基準では、ある程度の帯域を確保して480pによる高画質化を図った放送を行いたいという申請を出しても、結局はSDTV放送であると扱われて、周波数の割り当てを受けにくい状況にある。ただし、しっかり帯域を確保した480p放送は、一般的なSDTV放送である480iと比較すると明らかに高画質であり、1080iとの画質の差は小さい。また、同じ480iあるいは480pでも、帯域幅が広いと精細感は高まる。衛放協が今回、総務省に意見を提出した背景にはこうした事情がある。