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 三つ目はパンデミックを想定した訓練で見つかったもので,「社外勤務の際に必要な書類やデータが入手できない」という課題である(図1)。システム・インテグレータであるアクシスソフトの受託開発部門は2009年9月,開発業務を在宅で行えるかどうかを検証した。同部門では自社開発の情報共有システムなどを用い,ほとんどの書類を電子化している。それでも,28人が丸1日在宅で勤務したところ,契約書がなくて困ったなどの結果が得られ,必要な書類を洗い出せた。

図1●災害時のIT現場の活動を円滑にするための課題3
図1●災害時のIT現場の活動を円滑にするための課題3
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 パンデミック発生時は,感染拡大防止のため事業所閉鎖を行う場合があり得る。在宅勤務を進める際,どの書類やデータが必要なのか,必ず事前に調べておきたい。それには試験的に在宅勤務を行ってみるのが一番である。

 ここでは,アクシスソフトの在宅勤務の検証結果を紹介する。同社は「参加者にアンケートをとって課題を洗い出した」(ソリューション事業本部 副事業本部長 執行役員 荻野時宏氏)。前述した契約書のほかに,動作確認のために(会社にある)携帯端末が必要になったという(図2)。

図2●在宅勤務の検証で洗い出された課題<br>アクシスソフトの受託開発部門が実施した。電子化していない書類を参照したいときがあるなどが洗い出された
図2●在宅勤務の検証で洗い出された課題
アクシスソフトの受託開発部門が実施した。電子化していない書類を参照したいときがあるなどが洗い出された
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 契約書をすべて電子化するとコストがかかり過ぎるので,今後発生する契約から優先的に電子化を進めることにした。携帯端末は動作確認用で,緊急度は低いと判断し,後日出勤が可能になってから利用することにした。

 一方で,在宅勤務で業務効率が低下するのはやむを得ないことと考えている。例えば,対面の打ち合わせが多い作業フェーズでは,効率が低下しても電話などで行うしかないという結論だ。「子供がいるので自宅勤務しにくい」という意見には,会社としての対策は特に打ち出さなかった。

災害時に備えて回線数なども拡張

 必要な書類やデータを見極めることができたら,それらを電子化してオフィスやデータセンターのサーバーに置き,自宅などからアクセスできる環境を整備する。

 パンデミック発生時は,用意しているリモート・アクセス環境では不十分になりやすい。VPN(Virtual Private Network)の場合は,利用部門にアンケートをとって必要数を増やす。接続ライセンス数を増やしたり,機器性能を上げたりする。住友電気工業は2009年秋にリモート・アクセス回線の同時接続台数を200から3000に増強した。「出勤停止になったときに社員が在宅で業務を行うことを想定している」(情報システム部 次長 情報システム部システム企画部 部長 奈良橋三郎氏)。

 企業によっては,リモート環境からアクセスできる社内サーバーを制限していることもあるので,災害時などにきちんと使えるように見直す。

 富士フイルムコンピューターシステムでは,リモート・アクセス回線数を100から1000へと10倍に増加する計画だが,併せて接続ルールを変更して幅広い情報にアクセスできるようにする。従来はリモート接続時にグループウエアのNotesのみに用途を限定していた。それを変更し,接続できるPCを独自の方法で制限することで他の社内システムの情報にもアクセスできるようにする。

自宅PCをシンクライアントに

 自宅PCから社内LANに接続することを禁止している場合は,自宅PCをシンクライアント化するなど,端末の用意には一工夫必要である。

 OKIは2009年12月,社内情報システムについて在宅勤務を念頭に「USB型シンクライアント製品を使ってリモート・アクセスの接続テストを行った」(情報企画部 担当部長 原田融氏)。同製品を使って自宅PCから会社PCに接続すると,会社PCのデスクトップ環境を自宅PCで利用できる。

 NECでは,在宅勤務をするときは「CD-ROMベースのシンクライアント製品を利用している」(経営システム本部 シニアマネージャー 吉原康夫氏)。この製品のCD-ROMを自宅にあるPCで起動して,会社の環境にアクセスする。同社ではセキュリティ上,社内からノートPCを持ち出せないルールにしている。