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 アジャイル開発が広まる機運が高まっている。アジャイル開発を経験したマネジャたちが「繰り返し開発と振り返りが本質」と気づいたからだ。「30年前の現場にあった改善の喜びを取り戻せる」と指摘するマネジャもいる。システムを開発する立場からアジャイル開発を取り巻く変化を追った。

 短期間の「繰り返し開発」と開発した結果の「振り返り」。たった二つを実践するだけで、技術者も利用者も幸せになれる。2009年、登場から10年がたったアジャイルの価値がこの二つに集約されてきた(図1)。

図1●「繰り返し開発」と「振り返り」のみを実践するのが“今のアジャイル開発”
図1●「繰り返し開発」と「振り返り」のみを実践するのが“今のアジャイル開発”
短期間の開発を繰り返し、結果を振り返って、システムそのものと開発の進め方を改善していく。この姿は30年前の開発現場と同じだ。これまではアジャイル開発の細かい技術面に目を奪われていた
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 「アジャイル開発はプログラマ寄りの技術で、ウォータフォール開発の対立軸と捉えていた。しかし実際にやってみるとその根本は繰り返し開発と振り返りであり、それは自分たちが30年前に開発現場で実践していたことと変わらないことがわかった」。富士通 文教ソリューション事業本部 文教第二ソリューション部の中尾保弘部長と、日立製作所 アプリケーション開発事業部 共通技術統括センタの佐藤義博センタ長は、異口同音にこう話す。ともに大規模開発でのプロジェクトマネジャの経験を持つベテランで、今年、アジャイル開発を初めて経験した。

 30年前、システムの開発現場はチームと個人が成長を感じる“幸せな”職場だった。「発注側と受注側がひざを突き合わせて必要な機能を考え、毎朝ミーティングをして、機能単位で開発とレビューを繰り返していた」(富士通の中尾部長)。「開発に対しては常に改善の姿勢で取り組んでいた。自分で目標を立てて、目標を達成できなかったらどこが課題かを考えて改善策を実践した」(日立の佐藤センタ長)。

 だがこの流れは断ち切られた。「情報システムの活用が盛んになり開発が大規模化する中で多重請負構造が進み、ウォータフォール開発は文書管理と品質強化に向かった。会話や改善する余裕が奪われた」(同)。

 アジャイル開発は“改善”を取り戻すカギとなる。富士通がアジャイル開発に参加した技術者の満足度を尋ねたところ、全社平均を1点近く上回る4.4点だった。「参加できて良かったか」という問いに全員が「はい」と答えた。

 なぜこれほど評価が高いのか。アジャイル開発は、動かせるシステムを短期のリリースで提供する。発注者は要件を早く確認できることで安心感を持てる。これが技術者の幸せに結びついたと中尾部長はみる。

 「動くシステムを作れた、発注者の期待に応えられたと、繰り返しのたびに小さな成功を経験できたのが大きい」(同)。さらにアンケートでは「日々の活動で改善点を見いだすことでプロジェクトが良い方向に向かう」が4.8点と高得点だった。

 繰り返し開発と振り返りはアジャイル開発が10年前に登場したときから変わらない基本の考えだ。だがこれまで、技術面に目を奪われ過ぎて日本ではあまり注目されなかった。