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 新聞やテレビ,雑誌といった旧来からのメディアは,従来の事業モデルの崩壊に直面し,苦境に追い込まれている。昨今は,米アマゾンの電子書籍リーダー「Kindle」や米アップルによるタブレット型端末「iPad」の登場により,旧来メディアからの読者/視聴者離れが加速するのではないか,という議論が盛り上がっている。

 著者は,こうした変化を情報産業の「創造的破壊」ととらえ,旧来のメディア産業がたどる今後のシナリオの可能性について言及している。

 旧来メディアの新陳代謝は,日本よりも米国において激しく進展している。本書の前半では,ネット上の情報のアグリゲータであるGoogleと,新聞,テレビなどのメディアの対立,という構図を取り上げ,独立したジャーナリズムの存続というテーマについて考察する。

 多数の地方紙が経営破綻に追い込まれている米国の新聞業界では,政府による救済論が浮上している。民主主義の根幹である「多様なジャーナリズム」を確保するためには,旧来メディアの援助が公共に寄与するという議論だ。一方,米国では前米大統領のスキャンダルをはじめ,様々なスクープがブログを通じて発信され始めている。著者は,ネット・ジャーナリズムが既に多様な言論のベースを形成する役割を担い始めているのではないかと指摘する。

 組織としての旧来メディアを保護すべきとする議論がないわけではない。時間とお金をかけた丹念な調査報道や,海外報道など個人活動ではカバーしきれない分野は,個人ベースのネット・ジャーナリズムでは対応できないという意見だ。

 ただ,これに対しても著者は否定的。米国ではNPOや海外のフリーランスを中心に,ネットで既存媒体を代替する活動が芽生え始めていることを取り上げ,伝送媒体や紙媒体の販売網といった大きなハンデを背負った旧来メディアは敗北するだろうとしている。

 中盤では,こうした動きが日本においてもメディア産業の再編,統合を誘発するだろうと予測する。通信と放送の融合という政策誘導を背景に,今後のメディア産業においては,情報に対する純粋な対価を得る有料モデルのグループか,娯楽,エンターテインメントの分野で,旧来メディアに映画や音楽,グッズ販売などの物販を横展開するメディア・コングロマリット・グループを成立させることが不可欠になるという。

 少々物足りないのは,こうした融合を生み出すきっかけを,国内の通信事業者に求めたことだ。この1,2年の「国際競争力」議論でもそのようなテーマは取り上げられてきたが,果たしてそうした巨人を形成するメリットが,通信業界側に存在するのかという考察が欠けているように感じた。

次に来るメディアは何か

次に来るメディアは何か
河内孝著
筑摩書房発行
777円(税込)