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 本研究所では、クラウドコンピューティングについて、モバイルソリューションの観点から企業の情報システムを考えます。これまでは経営者やユーザーの観点から、クラウドの価値や本質、クラウド導入に積極的な企業の条件、コラボレーションの大切さ、IT部門の意識変革などについて言及してきました。今回は、モバイルクラウド化へのロードマップについて言及するための前段として、少し先の世界観について研究してみましょう。

コンピューティング環境のライフサイクルが短くなっている

 モバイルクラウド化のロードマップに言及するに当たっては、ある一つの考え方を示しておかねばなりません。コンピューティングリソースの集中と分散についてです。これまで、この集中と分散が繰り返されてきました。クラウドコンピューティングに先行したクライアント/サーバー環境は、プロセサの集積度向上に伴うパソコンの飛躍的な性能向上によってもたらされました。それ以前はメインフレームの時代です(第2回参照)。

 ここで注目したいのは、「集中か分散か」の議論ではなく、それらを実現するソリューションのライフサイクルが次第に短くなってきている点です(図1)。メインフレームが40年以上経過しているのに対し、クライアント/サーバーは20年、Webコンピューティングが15年です。

図1●コンピューティングトレンドのライフサイクルは短くなっている
次のトレンドが2017年にも到来する?
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 この流れからみれば、と現時点で既に2007年から2~3年が経過しているクラウドコンピューティングは、今後5~7年で次のコンピューティングの概念が勃興し、トレンドが変わる可能性は否定できないでしょう。

 VMwareやCytrix Xenといった仮想化ソフトにより、ハードウエアは急激にソフトウエア化が進んでいます。サーバーサイドだけでなく、ユーザーサイドにあるPCのデスクトップ環境も仮想化が始まっています。IT部門の目の前からだけでなく、ユーザーの目の前からも、ソフトやアプリケーションがインストールされたコンピュータ機器が姿を消そうとしているのです。最後に残るのは、入出力機器と画面だけかもしれません。

 とはいえ、一部ベンダーからは、「現在のネットワークでは遅い。IPベースではない、新たなネットワークがあれば実現できることが多い」といった声も聞こえてきます。クラウド化が進み始めたばかりの段階で、これは多少過激な議論かも知れませんが、データセンターサイドにすべてのリソースを抱え込んでしまうと、ネットワークが次のボトルネックになる可能性は高まります。

 モバイルに着眼すると、現状のモバイル環境では、まさにそれが起こっています。2012年頃に本格化するLTEによるモバイルブロードバンド環境の到来までは、「ネットワークが遅い」という意見が出続けることでしょう。

 ロードマップを描く際には、これらの現在起こっている事実の将来形と、将来起こり得る新たなトレンドを認識しなければなりません。でなければ、単に現状のコンピューティングリソースを社内で仮想化したりデータセンターに移したりといった結論になりかねません。