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文:吾郷 周三=アビーム コンサルティング プロセス&テクノロジー事業部 ディレクター

 地方を含む国の財政が悪化の一途をたどっている。地方分権・地域主権に向けて、各自治体はその財政にかかわる説明責任が一層強く問われることとなる。しかし、これまでの「単式簿記・現金主義」の官庁会計では、行政サービスにかかるコストを適切に把握することができず、膨大な借金にどのように対応すればよいのか、判断材料を得ることができない。

 そこで、企業会計と同様の「複式簿記・発生主義」を適用した新しい公会計の導入、いわば“地方公会計改革”が必要となる。全5回にわたって、地方自治体の公会計の実情や新しい公会計制度が求められる背景、新制度へ移行するために必要となる施策、事例などについて解説する。

もはや公会計改革は必須

 国と地方の長期債務の合計残高は、2009年度(平成21年度)末に825兆円程度になる見通しである。そのうち地方の長期債務は198兆円程度を占める見込みである(図1)。また、景気後退に伴う税収の急減や、少子・高齢化に伴う社会保障関係経費の自然増などにより、地方財政は同年度には10兆5000億円の財源不足となり、地方財政計画の12.7%に達する規模となっている。これ以上の借金は許されないし、多くの識者が日本の財政破綻(はたん)に警鐘を鳴らしているような状況である。

図1●地方財政の借入金残高の推移
図1●地方財政の借入金残高の推移
出典:総務省 自治財政局のWebページから転載
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 住民は、社会保障をはじめとして、国や地域の将来に対して大きな不安を抱いているのではないだろうか。本来、収入に見合った支出をしていれば、このような事態にはならなかったはずである。行政サービスにどれだけコストがかかっていて、現世代・次世代がどれだけ負担することになるのか、数値に基づく理解が進まず、ますます不安が募る。地方分権が本格的に進めば、各地域は税収に見合った支出を考えるようになる。今後、多くの良識ある住民は、地域の行政サービスにかかわるお金の使い方について、次のように考えるのではないだろうか。

(1)受益と負担の公平:行政サービスはコスト負担に見合うよう、是々非々で提供してほしい。使わない“ハコモノ”は要らない
(2)世代間の負担の公平:現世代で負担すべきは負担し、子・孫の代にまでツケを回したくない
(3)わかりやすい説明:上記2点を含め、住民にわかりやすく、事実に基づいて説明してほしい

 そのためには行政の運営について、
 1:財源と歳出の関係の明確化
 2:資産や負債のストック情報の把握
 3:正確なコスト計算
 4:会計基準の統一
が必要となり、その前提として「複式簿記・発生主義」を適用した公会計が必須となる。