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 米Googleが中国政府に強いられてきた自己検閲を停止し、波紋を広げている。Googleと当局の交渉は、ともに一歩も譲歩の姿勢を示さず、ついにGoogleが奇策に転じた。そうした中、ドメイン名登録最大手の米Go Daddyも当局に反発、「.cn」の新規登録を中止すると発表した。同社顧客へのサイバー攻撃も明らかになった。

 また米Twitterの幹部は同社が中国向けサービスを準備中であることを明らかにしたが、今回のGoogleの一件も手伝ってその実現性は疑問視されている。米Appleが、Android端末メーカーの台湾HTCを訴えGoogleをけん制するなど、この3月はIT業界がダイナミックに動いた。だがとりわけ中国関連の話題が多かった。

Google、アクセス状況の公開で当局をけん制

 営業拠点や従業員を中国本土に残したまま、コンテンツは当局の手の届かない所に置く。Googleはそうした解決策で「とどまりながらも撤退もする」という目的を達成したかのようだ。しかし、「Googleは賢すぎるが故に、当局の怒りを買っている。やがて翻弄(ほんろう)されることになる」。英Financial Timesなどの欧米メディアはそう報じている。

 Googleは、中国の人権活動家のGmailアカウントがサイバー攻撃を受けたことや、中国政府から強制されていた自己検閲が「ネット上の言論の自由に反する」と主張。検閲を廃止する意向を表明し、それが阻止される場合は検索サービスの中国市場からの撤退もやむを得ないとしていた。

 同社と中国当局の協議が行き詰まりを見せたと報じられた3月下旬、Googleはついに行動に出た。22日、同社は「中国当局が一貫して検閲を “交渉不可能な法的要件” と考えていることが分かった」とし、「香港のサービスで中国本土向けのサービスを提供するという新しいアプローチを取ることにした」と発表した。

画面1●Google.com.hk
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 中国本土のサービス「Google.cn」へのアクセスを、法制度の異なる特別行政区、香港に移し、香港版サービス「Google.com.hk」内で本土向けの簡体字サービスを検閲なしで提供することにした(画面1)。

 法的要件を満たしながら検閲をせずに済む方法とし、Googleはこれを“完全に適法” と説明している。ただ、中国当局がGoogleのサービスをいつでも遮断できることは承知しているとし、サービスへのアクセスを監視し、専用ページでその状況を毎日報告している。数日後には、Gmailに不審なアクセスを警告する機能を追加した。こうした行動で中国当局をけん制している。

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  • 「中国が賢いなら、静観するはず」

     中国国営の新華社は23日、「Googleは中国市場参入時に締結した約定書に違反しており、同社のとった行動は、これまでの状況を悪化させただけの“完全な誤り”」とする中国政府当局者の声明を報じた。

     この問題についてFinancial Timesは、「もし当局が賢いのなら、この事態を静観し、メディア報道が収まるよう努めるだろう」とする元CNNジャーナリストRebecca MacKinnon氏の意見を伝えている。

     「この話題が長期間注目されるようになると、より多くの人が関心を寄せるようになる。中国の検閲は、検閲が行われていることを多くの中国人ユーザーが知らない状況にあって初めて成り立っている」(MacKinnon氏)という。またこの記事は、当局は今後、香港版サービスから中国本土に入ってくる検索や情報のパターンを監視して、今後の検閲政策に利用するのではないかというアナリストの見解も報じている。

     さてボールはGoogleから中国当局へと渡った。当局は今後どのような行動に出るのだろうか。

     Googleの報告によると、自己検閲を中断した1週間後の3月29日現在、Web検索やニュース記事検索、画像検索には遮断された様子はうかがえない。ただ公開したアクセス状況報告ページによるとモバイル・サービスは一部遮断されたようだ。また動画サービスの「YouTube」やブログ・サービス「Blogger」などは検閲停止前と同様に遮断が続いている状態だ。いわゆる「Great Firewall(万里のファイアウォール)」がこれまで通り、当局が好ましくないと考える外国サイトを遮断している。

     各種のメディアによれば、自己検閲の停止後、「胡錦濤国家主席」や「温家宝首相」といったキーワードで検索した場合、Webブラウザには、中国国外の情報が遮断されるときと同様のエラー表示が出るという。

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