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ビジネスブレイン太田昭和
会計システム研究所 所長
中澤 進

 ASBJ(企業会計基準委員会)は2010年4月12日、IFRS(国際会計基準)へのコンバージェンス(収れん)に関する「プロジェクト計画表」の最新版を公表した。ここで「包括利益の表示」に関する最終基準の公表を、当初予定の「2010年1~3月」から「2010年4~6月」に延期することを明らかにした(関連記事)。

 既に3月25日のASBJの第198回企業会計基準委員会において、「包括利益の表示」について公表議決を延期し、数カ月の継続検討をすることになっていた。

 昨年12月25日に発表された企業会計基準公開草案第35号「包括利益の表示に関する会計基準」では、適用時期は公表後1年後の2011年3月期の期末からが適切であるとし、早期適用も妨げないとしていた。そのため、この3月末に公表する予定だった。

 それが延期になったのは、公開草案第35号に対して多くのコメントが寄せられ、もう少し時間をかけて議論すべきということになったからだとみられる。コメントでは、連結先行と言いながら、このタイミングで単体決算にも包括利益を表示することの是非を疑問視する声や、非上場企業にとってはあまり意味がないなどの意見が出ていた。

 ただし、「包括利益の表示」の適用そのものは延期されない模様である。適用のタイミングは公開草案通り、2011年3月に終了する事業年度末となる公算が大きい。

「連結先行」に関する本質的な議論が不十分

 実際のところ、包括利益を表示するだけであれば、特段大きな問題はない。包括利益は「純利益」と「その他包括利益」から成るが、後者のその他包括利益は実質的に評価・換算差額を呼び換えたものとなっている。これなら、作成者側の負担は大きくない。会社法上の分配可能額や税務との調整に関しても、それほど手間は生じないと予想される。

 にもかかわらず、なぜ今回「包括利益の表示」を継続検討することになったのか。その背景には、IFRSのアダプション(強制適用)が視野に入った今、「日本企業にとって“連結先行”とは何を意味するのか」に関する本質的な議論が不十分であるという問題意識があるようだ。

 IFRSのアドプションをするとなると、連結財務諸表作成の概念が大きく変化する。すなわち、従来の「親会社説」から「経済的単一体説」にと変わる。この変化により、支配権を維持しつつ子会社の株式を売却しても損益取引にできない、あるいは、企業買収時ののれんの考え方が購入のれんから全部のれんになるといった事態が発生する。財務諸表上は、利益の表示形態が変化することになる(図1)。

図1●親会社説(日本基準)と経済的単一体説(IFRS)
図1●親会社説(日本基準)と経済的単一体説(IFRS)

 こうした変化が予見されている中、今回、親会社説のままで、連結財務諸表での包括利益の表示を性急に進める必要があるのか。その中で、個別財務諸表をどう取り扱うべきか。このような様々な意見が出ているのが現状である。