PR

 いわゆるユーザー企業の情報システム部門で長年にわたってSEの仕事をしてきたため、SEという言葉はやはり気になる。そこで本書を手に取ってみたところ、SEのセオリーとして、『孫子』にある風林火山の話がいきなり出てくる。日本では武田信玄で有名だが、SE版は「実行すること風の如く」「お客様のニーズを聞くこと林の如く」「アイデアを出すこと火の如く」「基本をはずさないこと山の如し」であるという。

 SEの風林火山を実践するための手法として、目的展開・なぜなぜ展開、創造的開発手法TRIZ、9画面法などが説明されていく。著者が専門とするTRIZを説明するくだりでは、40個ある発明原理が1ページずつ図解されており、理解が進む。アイデア評価法、マーケティングについても事例を交えて書かれており、あっという間に読み終えることができた。

 Wikipediaの「システムエンジニア」の項には「通常は情報システムの要件定義、設計、開発、運用などや、それらを統括管理するプロジェクトマネジメントなどに従事する」と出ていた。情報システムを創り出すことと、マネージすることに大別されるわけだが、本書の特徴は創り出す側にフォーカスしているところである。

 一般論として、情報システム部門にいるSEは、プロジェクトマネジメント中心、悪く言うと偏重になり、もう一つの創り出す仕事をITベンダーなどに任せてしまう傾向がある。しかし、SEがニーズを聞き、アイデアを出し、プロジェクトを生み出し、実行してこそ、プロジェクトマネジメントの出番がやってくる。

 本書の終わりに書かれている通り、キャッチアップ型のHOWの時代から、オンリーワン型のWHATが重要な時代に変わりつつある。やたらに細分化されてしまった各分野の専門知識をインテグレートして創造性を発揮する、そのことがSEにとってますます重要になってくる。その一助となる創造的開発手法を学び、業務のなかに組み込み、実践することも必要だろう。

 手法の習得はもちろん、その実践も簡単ではないが、課題解決の面白さ、本来の創造の楽しさ、すなわちSEとしての仕事の楽しさを、多くのSEたちと感じていきたい。そしてプロのSEとして、お客様やユーザーに感動を与えることにつなげていきたいと思う。

評者:村林 聡
銀行における情報システムの企画・設計・開発に一貫して従事。三和銀行、UFJ銀行を経て、現在は三菱東京UFJ銀行執行役員システム部長を務める。
SEのスピード発想術

SEのスピード発想術
粕谷 茂著
技術評論社発行
1554円(税込)